2013 Fiscal Year Research-status Report
終末期ケアにおける日本型「事前指示書」の開発とソーシャルワーカーの役割の検討
Project/Area Number |
24730479
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
佐藤 繭美 法政大学, 現代福祉学部, 准教授 (90407057)
|
Keywords | ソーシャルワーカー / 意思決定支援 / 事前指示書 / 終末期ケア |
Research Abstract |
今年度は、主に国外調査を基軸に、比較検討を実施した。 1.国外調査では、イギリス・ロンドンのSt Christpher’s Hospice、ならびにTrinity Hospiceを訪問し、ソーシャルワーカーや専門スタッフへのインタビュー調査を実施することが可能となった。St Christpher’s Hospiceは、近代ホスピスの原点ともいえるホスピスであり、本研究課題である「事前指示書」に関連した意思決定支援について、確実に実施されていることが明らかとなった。また、Trinity Hospiceは、イギリス最古のホスピスであるにも関わらず、常に先端であり続けようと努力されており、「意思決定支援」におけるソーシャルワーカーの働きの重要性を知ることが可能となった。なかでも、日常の決定から、命にかかわることまで、丁寧な聞き取りが行われ、あくまでも、ソーシャルワーカーは、側面的支援を行う専門職であることが明確なものと位置づけられていた。決めるのは、本人であるということが重要であると示唆された。 2.比較検討では、昨年度、実施したドイツでのインタビュー調査結果との共通点、相違点について検討を行った。ドイツ・イギリスとも、本人の意思に反した命にかかわることが遂行されようとした場合、後見人となる立場の人々が、徹底して議論し、本人の尊重を第一優先にするということがどちらにも共通していた。それらの根拠となる背景には、本人が発言・もしくは記した文書が法的根拠をもって、重要視されるということが明らかとなった。また、本人による意思決定ができない状態の場合、出来得る限り、本人の意見を尊重できる形、あるいは本人の嗜好を汲み取り、本人の決定にできる限り近付けるというのも共通している点であった。しかしながら、どちらにおいても、本人の判断能力が乏しい状態の支援の困難性については、ソーシャルワーカーの「聴く力」に左右される可能性も否定できないことが浮き彫りとなったといえよう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に資料収集、国外調査を実施しており、研究に必要な資料等を収集することが可能となった。イギリスでは、2005年に意思決定能力法が制定されて以後、より丁寧な聞き取りをするようソーシャルワーカーたちは努力していることが明白となった。しかしながら、判断能力が十分でない人たちへの支援のあり方には、迷う部分も少なくないという。この結果は、日本の社会福祉援助のあり方にも共通するものであり、終末期への支援において、大きな視座を与えるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 今後は、ドイツ・イギリスの調査における比較検討結果を投稿論文等で示したいと考えている。また、ドイツの事前指示書の具体的な書式の全面公開についても、要望があるため検討したいと考えている。これら先進地域での調査をふまえ、国内の調査を進めていきたいと考えている。国内でも、事前指示書は注目されており、実施している医療機関等がある。それらに調査を依頼し、社会福祉施設での応用の可能性について検討していきたい。 (次年度の研究費の使用計画) 次年度は、国内調査を中心に「事前指示書」のあり方について検討していくつもりであるため、出張旅費に多くの費用がかかると推定される。また、事前指示書の公開の仕方により、印刷費についても費用を多く使用したいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に翻訳を検討していたものの、資料が手に入り、要約が可能となったため、次年度使用額が発生した。 この金額は、別の欧文資料を収集し、その翻訳費用に充てたいと考えている。
|