2012 Fiscal Year Research-status Report
地域社会を基盤とした高齢者への生活支援サービスの変遷に関する日英比較研究
Project/Area Number |
24730502
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
白瀬 由美香 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 第3室長 (50454492)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 英国 / 日本 / 高齢者 / 生活支援 / 医療 / 介護 / 社会参加 |
Research Abstract |
平成24年度は、高齢者への生活支援サービスの前提となる医療・介護システムの構造についての日英比較、両国で公的・私的に地域で行われてきた生活支援サービスの変遷過程に関する資料収集と検討を行った。 前者については、公的介護制度とサービスの質の確保に関する日英比較の結果を国際学会で口頭発表をした。日本は2000年に介護保険制度が導入されたが、英国は1948年に救貧法が廃止されて以来、措置制度による介護サービスが続いている。サービスの最低基準の規制・監査は、日本では地方自治体が行っているのに対して、英国では行政から独立した監査機関が行っていた。第三者機関による質の高さの評価については、日本では受審率が低いこと、英国には同様の評価制度が無いことが課題であった。そして、質に関する情報が誰に向けたものなのか、海外の研究者と意見交換を行った。それを通じて、制度の違いだけでなく、生活支援に求められるものの違いについても、理解を深めることができた。 後者については、第二次世界大戦後に地域社会を基盤として提供されてきた高齢者への生活支援サービスについて、先行研究をもとに実施主体、種類、提供状況などを把握した。また、長野県やバーミンガム市等の地域史資料をもとに、1950~70年代の配食サービス、家事援助、老人クラブなどの実態を検討した。また、過去の地方新聞や市の広報誌、公民館報などを利用して、当時の人々の暮らしぶりの理解に努めた。さらに、高齢者福祉施策や非営利団体等によって行われる生活支援サービス、サービス付高齢者向け住宅の現況に関する情報収集を行った。これらをもとに、時代の移り変わり、生活様式、世帯構成の変化によって、生活支援がどのように変化したのかを検証しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英国の地域福祉の変遷に関する先行研究の収集と検討は、おおむね予定通りに進めることができた。ただし、日本のホームヘルプの変遷、特に初期の家庭奉仕員に関する部分において、未収集の先行研究がまだいくつか残っていることが判明したため、既存文献の収集を優先して行い、一次資料の整理が予期していたよりも遅れてしまった。けれども、当初は平成25年度を中心に行うこととなっていた、民間非営利団体等による生活支援サービスの現況に関する情報収集を予定以上に進めることができた。したがって、研究全体としてみれば、総じて順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度に引き続き歴史資料の収集を進めるとともに、生活支援サービス提供に携わる自治体や非営利団体などに聞き取り調査を行う予定である。収集した文献や聞き取り調査の結果をもとに制度の歴史的変遷について分析し、日本と英国の生活支援サービスの実態に基づいた比較検討に着手する。さらに、医療や介護などの制度との連携の状況、自立支援に対する両国での考え方などについても考察を試みる。それらを通じて、日本と英国の地域社会の違いを踏まえた生活支援サービスの共通性と異質性について整理する。 日本: 高齢者の悩みごと相談、家庭奉仕員事業、老人クラブなど、日本の高齢者福祉に関連した地域史資料の収集と分析を引き続き行う。それに加え、介護保険給付外で行われている配食サービスや安否確認、生活用具の支給などの生活支援サービスの実態について、各地の現況を把握する。市町村やサービス提供事業者に聞き取り調査を実施し、現状と今後の展望についても検討を行う。 英国: 英国で伝統的に行われてきた慈善団体・非営利組織による高齢者への見守りや話し相手、デイセンターの運営などに関する歴史資料の収集、および聞き取り調査を行う。1960年代以降の生活様式の変化、移民の増加などに伴う地域社会の変容を踏まえ、生活支援サービスの機能の変遷について考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)