2013 Fiscal Year Research-status Report
地域社会を基盤とした高齢者への生活支援サービスの変遷に関する日英比較研究
Project/Area Number |
24730502
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
白瀬 由美香 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 第3室長 (50454492)
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Keywords | 国際情報交換 / 英国 / 日本 / 高齢者 / 生活支援 / 医療 / 介護 / 社会参加 |
Research Abstract |
平成25年度は、まず日本および英国で公的・私的に地域で行われてきた生活支援サービスについて、歴史的変遷過程に関する資料収集と検討を行った。前年度から引き続き先行研究をもとに、日本と英国それぞれの高齢者への生活支援サービスの実施主体、種類、提供状況などの把握に務めた。長野県やバーミンガム市等の過去の地方新聞や市の広報誌、公民館報などをはじめとした地域史資料、全国老人クラブ連合会等の全国レベル組織の歴史資料をもとに、配食サービス、家事援助、老人クラブなどの活動実態、高齢者の生活状況について検討を行った。研究を通じて、日本における初期のホームヘルプや老人クラブは、英国での活動を参考に導入されたことも明らかになり、日英比較をする上で事業内容や導入背景の類似点・相違点を抽出することが重要と考えられた。 さらに、現代日本における生活支援の実態を明らかにすべく、非営利団体等による生活支援サービスの提供状況についてヒアリングを行い、「高齢者の社会参加と生活支援に関する意識調査」と題したインタビュー調査にも着手した。インタビューは東京都多摩地域でボランティア活動をする高齢者を対象として、ボランティア開始や活動継続の理由、活動を通じて感じた喜びや困難、日常生活や地域の助け合いについての意識等について半構造化面接を行った。調査は現在も継続中であるが、これまでの経過から、公的サービスだけではカバーし尽くせない高齢者のニーズにボランティアがいかに応えているのかが浮き彫りになりつつある。医療・福祉専門職とボランティアそれぞれが持つ特性を、いかにサービスに結びつけていくのかを検討することも次年度の課題の1つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホームヘルプの歴史的変遷についての書籍収集をはじめ、生活支援に関わる既存研究の成果と到達点を捉えることができ、それを踏まえた一次資料の収集と整理を進めることができた。ホームヘルプや老人クラブなど日本の高齢者向け事業が、英国に倣って導入されていたことに関する事実をつかめたことは、今年度実施予定の両国の比較検討をする上で大きな収穫であった。また、現在日本で生活支援サービスを提供する団体へのヒアリングおよびボランティア従事者へのインタビュー調査を行い、生活支援サービスの現況についても計画通りに把握することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、以下の2つの事項を柱として研究を進める計画である。第1に、生活支援サービスの変遷に関する日英比較として、歴史資料の読解と分析をより一層進め、両国の比較検討を行う。第2に、現代日本の生活支援サービス実態を探るため、日本の生活支援サービス提供に携わる団体でのヒアリングとボランティア活動に従事する高齢者へのインタビュー調査を引き続き行う。 ①生活支援サービスの変遷に関する日英比較:日本については、高齢者の悩みごと相談、家庭奉仕員事業、老人クラブなど、日本の高齢者福祉に関連した地域史資料の分析を行う。英国については、伝統的に行われてきた慈善団体・非営利組織による高齢者への見守りや話し相手、デイセンターの運営などに関する歴史資料を分析する。以上をもとに日英それぞれにおける生活支援サービスの機能の変遷について考察を行うとともに、両国の類似点と相違点について整理する。 ②現代日本の生活支援サービス実態:生活支援サービス提供団体へのヒアリングやボランティアへのインタビュー調査結果をもとに、公的な介護・福祉サービスだけではカバーし尽くせない高齢者の生活支援ニーズに、現状ではいかに応えているのかを明らかにする。福祉分野の専門職と地域生活者であるボランティアのそれぞれが持つ特性を、いかに生活支援サービスに結びつけていくのか、今後の在り方について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、当初は英国での現地調査(歴史資料収集と高齢者支援団体でのヒアリング)を予定していたが、訪問先との間で日程調整が付かず年度内に実施できなかったことから、次年度使用額が生じた。 平成26年9月頃に英国の歴史資料館での資料収集と高齢者支援団体でのヒアリングを実施する計画であり、そのための旅費として約30万円の支出を予定している。また、平成25年度より継続中のインタビュー調査について、録音した音声の逐語録作成を業者に委託する費用として、1.5万円×20人分=30万円を支出する見込みである。その他には、書籍等の物品購入費用5万円、有識者より専門的知識の提供を受けるための研究会開催に伴う講師謝金と旅費10万円、研究成果公表と意見交換のための学会出張旅費と大会参加費で15万円程度の支出を見積もっている。
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Research Products
(1 results)