2012 Fiscal Year Research-status Report
イメージ生成過程の脳神経基盤:イメージ情報と視知覚情報を抑制する機能の影響から
Project/Area Number |
24730616
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本山 宏希 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (30555230)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イメージ / イメージ鮮明度 / 抑制 / fMRI / 視知覚処理 / 注意 |
Research Abstract |
本研究では,イメージ生成を抑制する機能,および,外界からの視知覚情報を抑制する機能,二つの側面から, 心的イメージ生成過程を解明する。平成24年度は,その一方の機能であるイメージ生成を抑制する機能について焦点を当てた。 先行研究において,ネガティブイメージ想起時にイメージ生成を抑制する機能が作動することが示唆されている。本山他(2010)は,そのような機能の実在性を検証するために,イメージ抑制機能を担う脳部位を探索した。その結果,後帯状回が,その機能を担うことを示唆する実験結果を得た。ただし,イメージ抑制機能の脳内メカニズムは,ほとんど先行研究のない新奇な発見であるため,さらなる実験を行うなど慎重に吟味する必要がある。本年度は,ネガティブイメージ想起時以外のイメージが抑制される条件下においても,後帯状回周辺領域の活動が生じるか否かを検証する実験を行い,本山他(2010)の実験結果の妥当性を検討した。 先行研究において,視知覚像が形成されているときに同時にイメージ像も形成されてしまっては,形成された像がどちらなのか混同が生じるため,イメージの生成が抑制されることが示唆されている。すなわち,視知覚像を観察しているときには,イメージ抑制機能が強く作動しているのかもしれない。本年度は,視知覚像形成時とイメージ形成時の脳活動を比較検証し,視知覚像を形成しているときに,本山他(2010)で得られた後帯状回の活動が得られるか否かを検証した。その結果,イメージ生成中と比較して,視知覚像を観察しているときに,後帯状回のよる強い活動が生じていた。この結果は,後帯状回がイメージ抑制機能を担うことを支持するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,本研究計画は3つの段階を経て実施することを想定していた。具体的には,1)イメージ生成を抑制する機能を担う脳部位の特定,2)イメージ生成中に,視知覚処理を抑制する機能が実在するか否かの確認,および,もしそのような機能が実在するのであれば,その機能を担う脳部位の特定,3) 1)と2)の機能から,イメージ鮮明度予測モデルの作成である。研究計画の初年度である平成24年度は,1)の実施を予定しており,おおむね予定通りの成果を得ることができたと考えている。すなわち,研究実績の概要部でも述べたことではあるが,後帯状回周辺領域がイメージ抑制機能を担うことを示す実験結果が得られた。これは,本山他(2010)の実験と同様のものであり,本研究計画では,後帯状回がイメージ抑制機能を担う責任部位と考え,以降,イメージ生成モデルの作成に取り組んでいきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,イメージ生成中に外界からの視知覚情報を抑制する機能について焦点を当てる。イメージ想起中に外部から視知覚情報が入力されるとイメージ像を形成しづらいため閉眼するという方略はよく知られたものである。 近年,イメージ生成時に視覚野の活動が抑えられることを示す実験結果が報告されており,これは,あたかも閉眼時と同じように外部からの視知覚情報処理を自動的に抑制する機能があり,イメージ生成時にはそれが働いていると解釈することもできる。上記の先行研究などから,視知覚処理抑制機構の存在を仮定することはできるが, 実証的にはその実在性は全く検討されていない。そこで,平成25度は,以下の2つのことを検証する複数の実験を実施し,視知覚処理抑制機能の実在性を検証していく予定である。1)イメージ生成時に視知覚情報処理が抑制されるか否かを行動実験から検証する。2)もし,抑制が見られたなら,視知覚情報処理抑制時の脳活動を検証し,視知覚処理抑制機能を担う脳部位を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,フンボルト大学(ドイツ)のTorsten Schubert教授の研究室に約9ヶ月滞在した。Torsten教授は,注意機能の専門家である。本研究は,平成25年度以降に,注意機能と関連する実験を実施する予定であり,実験等のアドバイスを専門家から受けることを考えていた。平成24年1月に,海外留学を支援する奨学金に採択されたため,急遽本研究計画に対して専門的なアドバイスが可能な受入機関への留学を計画し,上記研究室に留学した。そのため,平成24年度に日本で研究を進めていた場合に購入予定であった,実験・分析に必要な複数のパソコンや実験装置の使用料の支払いを平成25年度以降に見送ることとした。そのため,本年度は当初の予定より出費が少なくなった。平成25年度は,昨年度に購入を見送ったパソコンの購入や実験装置の使用料として,繰り越された金額を使用する予定である。
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