2012 Fiscal Year Research-status Report
DRM虚記憶と自伝的虚記憶の理論的関連性に関する実証的研究
Project/Area Number |
24730637
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Takamatsu University |
Principal Investigator |
向居 暁 高松大学, 発達科学部, 准教授 (80412419)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 虚記憶 / 自伝的記憶 / 心霊体験 / 心霊信奉 / DRM / 個人特性 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
実際には呈示されていない関連ルアー項目の虚記憶を誘発するDRM課題を用いた数多くの実験室研究の成果から、虚記憶の生起が複雑な活性化やモニタリングのプロセスからなることが明らかにされ、理論的説明がなされてきた。今後はこれらの知見が、より多様で複合的な自伝的記憶にどのように応用可能であり、個々のプロセスがどのように自伝的な虚記憶と関連しているのかを解明することが重要課題となる。本研究は、実験室のDRM課題による虚記憶と現実世界で生起する空想的自伝的虚記憶との関連性を究明するために、双方の虚記憶に関与する活性化及びモニタリングに係る個人変数を個別に検討し、DRM課題の研究知見や理論の一般化可能性を探求する。 平成24年度は、DESを一般大学生(臨床群ではないという意味)で使用する際の床効果や歪度の問題を解消したのDES-Cの日本語版の信頼性を検討した。まず、DES(DES-II)とDES-Cを90名の一般大学生で実施し、その整合性を確認した。また,DES-C日本語版は、DES-IIとくらべて、歪度や床効果の問題が少ないことがわかった。サンプルサイズを179人に増加した分析でも同様の結果が得られた。 次に、包括的心霊信奉・心霊体験尺度の作成を行った。まず、不思議現象に対する態度尺度、超自然現象信奉尺度における心霊信奉・心霊体験に関連する項目、および、批判的思考や科学的思考に関する文献や研究に基づいて欠格プロセスの判断基準となる項目を加えて、質問項目を作成した。その結果、心霊信奉尺度については163項目、心霊体験尺度については49項目の質問紙が作成された。続いて、一般大学生95名にそれぞれの質問紙の回答を求めた。その結果にもとづいて、それぞれの尺度において、項目分析を行い、本調査で必要な項目を選出した。包括的心霊信奉・心霊体験尺度作成の本調査に向けた準備が終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
DES-C日本語版作成と妥当性の検討を行う予定であったが、その構造を確認し、再検査信頼性までは確認できたものの、その他の尺度と比較して、DES-C日本語版の特徴の検討を行うことができなかった。また、心霊体験尺度、および、心霊信奉尺度の作成を行い、DES-Cを含む、その他の尺度と比較して、その特徴を検討する予定であったが、項目作成のみで終了した。 研究の遅延の理由として、モニタリングプロセスの検討につながる項目を選定するために科学観などを多様な観点を盛り込んだため、項目選定に時間がかかり、また、その結果、項目数が多くなり、さらに、その中でも重要項目とされる項目の分布に床効果がみられるなど、項目作成の際の分析が複雑であり、予想以上に、詳細な検討が必要となったからである。この作業の複雑化が、DES-Cの妥当性の検討や特徴の検討の進行にも影響を与えた。そのため、予定よりもやや遅れる結果となった。平成25年度においても多くの質問紙を用いて、尺度の構成の検討を行う。そのため、先行研究に基づいて、使用する質問紙の種類を厳選することで、手続きを極力簡略化し、この遅れを取り戻すことができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、まず、包括的心霊体験・心霊信奉尺度を完成させ、その特徴を明らかにする。調査は、一般大学生120名を対象とする。あわせて、想像活動への没入尺度、空想傾向尺度、日常的離人・解離・分割投影尺度、アレキシサイミア傾向尺度をDES-Cの妥当性の検討のために実施する。DES-C日本語版、及び、包括的心霊信奉・心霊体験尺度をはじめ、その他にも、被暗示性尺度、VVIQ、VVQ、認知欲求尺度、妄想観念尺度日本語版、健常者用幻聴様体験尺度、統合失調症型パーソナリティ尺度、非現実感質問紙を実施する。 次に、DRM虚記憶の集団実験を実施する。9月~3月に、先に調査に参加した、大学生120名を対象とする。手続きとして、標準的なDRMリストを用意し、聴覚呈示する。その際に「テスト後再生課題」(Bredart, 2000)を用いて、モニタリングプロセスを測定する。本実験の結果は、各種尺度との関連性について相関分析、重回帰分析、及び、因果関係を想定した共分散構造分析を用いて検討される。本実験結果について次年度の個別実験のためにシカゴ大学のGallo博士、もしくは、リエージュ大学のDehon博士と討議する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
集団実験では、実験室となる講義室に持ち運び可能であり、刺激呈示のために十分な性能をもつノートパソコン、または、タブレット端末が必要となる。また、質問紙調査、および、実験の際に、用紙や文具、データ保存用の記録媒体が必要である。さらに、採取した調査・実験データの整理(約100時間)の作業のために、アルバイトを雇わなければならない。研究の計画においても文献収集を行っているが、今後も海外の文献を中心に収集し、結果の解釈やその妥当性の検討を行う必要がある。質問紙調査の実施、及び解釈に関する助言を求めるために茨城県立医療大学の研究協力者(佐藤純博士)を訪問する。研究結果の解釈の検討、新たな実験計画の検討、および、発表の相談等を詳細に行うために、アメリカ・シカゴ大学、または、ベルギー・リエージュ大学へ赴き、研究協力者と討議する必要がある。また、国内の学会や雑誌における研究成果発表のために出張旅費、及び投稿費用が必要となる。
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