2012 Fiscal Year Research-status Report
幼児期から学童期の文字獲得に関する縦断的研究―文字機能の自覚と使用実態に着目して
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24730657
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
松本 博雄 香川大学, 教育学部, 准教授 (20352883)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文字 / 幼児 / リテラシー / 保育 / 絵本 |
Research Abstract |
本研究の目的は、子どもの文字機能に対する自覚および日常生活における使用実態という側面に着目し、学童期初期と幼児期における両者の質的な相違およびその間の変化のプロセスを検討することであった。先行研究の多くが、文字獲得を従属変数として、読み書きがいかに成り立つかを説明する研究として位置づけられるのに対し、本研究ではそのようにして文字を獲得することがいかなる意味をもち、幼児の生活をどのように変化させるか、それが学童期へといかに結びつくのかを明らかにすることをねらいにデータ収集を行った。文献等を用いて検討したうえで、幼児の日常に埋め込まれた活動である「絵本作り活動」を取り上げ、保育所・幼稚園4~5歳児計54名を対象に、保育現場での実験および保護者への質問紙を用いた調査を実施した。具体的には、文字獲得期である幼児は絵本を作成するにあたって文字をどの程度用いるのか、作成した絵本について語る際に、文字はいかに機能するのか、また実際に用いられた文字は、当該幼児の文字獲得に関する大人の見立てをどの程度反映したものかを検討した。 その結果、作成された絵本のうちおよそ8割の絵本で文字が用いられていたいっぽうで、保護者が把握している幼児の文字獲得水準が、必ずしも絵本における表現には反映していないケースがあること、また文字が書かれていても、自らつくった絵本をスムーズに語れるとは限らないことが示された。ここから、幼児の表現中に現れた文字は、あくまで表現手段として開始され、それが伝達や記憶の媒体として成立するにあたっては実際のやりとりを経る必要があること、それらのプロセスを経た結果、幼児自身のアイデアや思いを形に残すものとして機能する可能性が示唆された。 なお、研究方法論の理論的整理と調査データの解釈にあたり、研究協力者として伊藤崇氏(北海道大学大学院教育学研究院・准教授)の助力を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、子どもの文字機能に対する自覚および日常生活における使用実態という側面に着目し、学童期初期と幼児期における両者の質的な相違およびその間の変化のプロセスを検討することであった。文献検討を経て、保育所ならびに幼稚園現場での調査を開始し、収集されたデータについて分析したうえで関連学会での報告を行っている。 学童期についてのデータ収集に着手すること、分析結果を国内外に広く報告したうえで検討を進めることが今後の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
保育所ならびに幼稚園現場での調査を継続するとともに、保護者へのアンケート結果とリンクさせた分析を進め、学童期への追跡データ収集のための準備を進める。 また、本研究で収集したデータと、これまでの研究にて収集した幼児期の音韻意識に関するデータとをリンクさせて再分析し、結果を関連学会(国外/国内)にて報告するとともに、論文投稿の準備を進める
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)保育所ならびに幼稚園現場での調査およびデータ収集・分析に関わる費用(消耗品・分析用機材・謝金)、2)関連学会(国外/国内)での報告費用(発表費・旅費)、3)論文作成のための費用(関連文献費・資料収集旅費・英文校閲費)が主な支出となる
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Research Products
(4 results)