2013 Fiscal Year Research-status Report
「平成の大合併」の進展と教育施設の新設・統廃合に関する実証的研究
Project/Area Number |
24730696
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
新藤 慶 群馬大学, 教育学部, 准教授 (80455047)
|
Keywords | 学校統廃合 / 公民館 / 市町村合併 / 地域教育 |
Research Abstract |
今年度は、群馬県のB町で行った調査と、新潟県のA市で行った調査の結果をまとめた。 B町の調査からは、第1に、市町村合併と学校統廃合の関連が2つの点で見出された。一つは学校建設費・改修費が合併特例債から支出されたこと、もう一つは、学校統廃合を積極的に行っていた自治体と合併することで、合併相手にも学校統廃合推進の機運が波及したことである。第2に、学校統廃合によって子どもの変化が生じていた。特に、小規模校の子どもは、教師との関係、子ども同士の関係が異なるため、教師からは統合後の学校生活になじむまでには3~4年かかるとの見通しが示された。また、スクールバスでの通学により、運動不足になる子どもや、下校時間が決まってしまうため、放課後の個別指導などが行いづらい状況も見出された。第3に、学校統廃合をめぐっては、保護者とそれ以外の住民との間で見解がわかれていた。一般住民は、地域の核や子どもの姿がみえなくなることへの心配から統廃合に反対することが多いが、保護者は、小規模校での複式学級や部活動の削減など教育環境の悪化を懸念し、おおむね統合には賛成していた。また、「時代の流れ」ゆえの諦念もあり、学校と地域の関係の弱まりも看取された。 一方、A市の調査からは、第1に、学校統廃合が進む一方で、公民館が増加する状況がみられた。そこには、公民館を中心とした社会教育領域に、学校教育を含む地域教育全体を位置づけようとする姿勢も見出された。また第2に、「地域の論理」と「教育の論理」が相互補完的な関係を持ち、公民館に町内会活動を補完させるという「地域の論理」が公民館の増加という教育の充実をもたらし、他方で、公民館における地域教育の拡充という「教育の論理」が、地域の核として公民館の位置づけを高めるという状況も見出された。学校統廃合後に公民館が持つ可能性をさらに検討する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、市町村合併の進展と教育施設の新設・統廃合の関係を探るものである。そこで、1年目は、関東地方でもっとも盛んに市町村合併が行われた群馬県内のB町を対象に調査を実施した。2年目は、全国的にももっとも市町村合併が進んだ地域の一つで、学校統廃合も大規模に行われたけれども、公民館の数が増加しているという特徴を持つ新潟県を対象に、特にA市での調査を実施した。これらは当初の計画通りであり、おおむね順調に進展しているといえる。 ただし、A市では、調査を進めるなかで公民館分館の重要性がわかり、分館に焦点をあてた調査を実施することとしたが、研究開始当初はそこまで状況がわかっていなかったため、分館対象の深い調査の実施までこぎつけることができなかった。平成25年度に消化できなかった研究費は、平成26年度に、このA市での残りの調査に充当することとしたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、以下の3つの課題に取り組む。第1に、「現在までの達成度」でも触れたように、新潟県A市での公民館分館に関する調査の実施である。調査内容についてA市教育委員会と調整に入るところであり、調査の実施が承認され次第、調査に着手したい。 第2に、茨城県を対象とした調査の実施である。茨城県は、新潟県と対照的に、市町村合併が進まず、学校統廃合もあまり行われなかったが、公民館の数が非常に少なくなっている地域である。そこで、県全体と特定の市町村を取り上げた調査を進めることで、「市町村合併」「学校」「公民館」の関連をさらに深く分析する。 第3に、本研究の知見のとりまとめである。本研究では、3つの地域を対象に「市町村合併」「学校」「公民館」の関係をみることになるが、その状況はいずれも対照的なものとなっている。そこで、これらの多様性を生み出す状況を、地域社会構造との関連で把握することで、平成の大合併が地域の教育にもたらした影響や、今後の地域と教育の関係について、一定の知見を得ることにつなげたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は主に新潟県A市での調査を行った。ここでは、市町村合併に伴う学校統廃合と公民館の増加との関連の把握を試みた。その過程で、当初は想定していなかった公民館分館の重要性が明らかとなってきた。しかし、公民館分館の調査を進めるための準備が不十分であったため、この部分に着手できず、次年度使用額が生じることとなった。 第1に、平成25年度に未使用であった分は、上記の新潟県A市における公民館分館の調査を実施するため、その費用に充当する。分館長への郵送調査の形態を想定している。現在、A市教育委員会との調整に入るところであり、許可が得られ次第、調査を実施したい。 第2に、当初予定通り、茨城県での調査の費用にも充てる。ここでは、茨城県教育委員会での調査と、城里町での調査旅費に用いる。また、必要に応じて調査票調査も行うこととし、そのための費用にも用いる。 第3に、調査報告書を作成する。本研究ではいくつかの調査を行ってきているので、その成果をまとめた報告書を作成することとし、その費用にも使用する。
|