2014 Fiscal Year Research-status Report
「平成の大合併」の進展と教育施設の新設・統廃合に関する実証的研究
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24730696
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
新藤 慶 群馬大学, 教育学部, 准教授 (80455047)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 市町村合併 / 学校統廃合 / 公民館 / 地域運営 / 教育委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、3つの研究課題に取り組んだ。第1に、新潟県佐渡市における市町村合併の進展と公民館組織の変容についてである。新潟県佐渡市域は、戦後の公民館の創成期に、県内でももっとも早く全市町村に公民館が設置されるなど、公民館活動が盛んな地域である。特に重要な役割を果たしたのが、「分館」と呼ばれる集落単位の公民館であり、ここが社会教育活動の拠点としてだけでなく、集落自治全般の核ともなっていた。この分館を、佐渡市への合併(2004年)を機に、すべて条例で位置づけ、補助金を支出するようになり、市内には242の分館が活動を展開するようになった。今後のまちづくりの拠点として公民館を活用する方針を市行政でも示しており、市町村合併後の地域運営における一つのモデルケースと把握できる。 第2に、茨城県内での市町村合併と学校統廃合の関連についてである。茨城県は、比較的市町村合併が進まず、学校統廃合も、相対的には遅れていた。しかし、2008年に県教委が学校統廃合に向けた働きかけに乗り出すと、各市町村も呼応するように、学校統廃合の動きを活発にし始めた。しかし、市町村教委での調査では、県教委の働きかけの影響はそれほど大きいものではなく、むしろ市町村合併の流れのなかで、年少人口の著しい減少に対応する形で学校統廃合が課題化されたことが聞かれた。今後も、各市町村教委での聞き取りを重ね、県内の全体的な状況の解明につなげる。 第3に、北海道釧路炭田での、炭鉱閉山に伴う廃校の影響についてである。学校統廃合に関わり、炭鉱閉山に伴う廃校の前後で生徒がまとめた作文や手紙の資料を入手することができた。これらの資料の分析を通じて、学校統廃合の影響を子どもたちの視点から解明することへの端緒が開かれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1に、調査の時期の問題があった。平成26年度にも取り組んだ佐渡市での公民館調査については、各公民館分館の組織や活動の実態をより詳細に把握するため、分館長を対象としたアンケート調査を企画した。しかし、個人情報保護の観点から、分館長の名簿の提供は認められなかった。その代わり、年度初めに行われる分館長会議でのアンケート調査の配布を認めていただけた。そのため、平成26年度中には調査を行うことができなかったが、平成27年度には調査を行うことが可能となっている。 第2に、茨城県内での調査の進め方についての問題があった。茨城県内の市町村を対象に、市町村合併と学校統廃合との関連を調査する計画を立てていた。しかし、当初は特定の市町村を対象とした事例調査を考えていたが、調査を進めるにしたがって、市町村によって状況が異なることがわかってきた。そこで、県内の市町村をより広く対象とした調査の実施を着想したが、すでに平成26年度の終わりの時期であったので、平成27年度に継続して調査を実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、3つの柱に従って研究を進める。第1に、佐渡市における公民館分館調査である。これは、分館長を対象に実施するアンケート調査、ならびにインタビュー調査によって進める計画である。佐渡市では、市町村合併を機に、住民と行政との距離の拡大を補う役割が、公民館に期待されている。この研究から、市町村合併後の集落運営を公民館の活用から検討することにつなげる。 第2に、茨城県内の市町村教委での調査である。これは、学校統廃合に向けた支援を打ち出した県教委に対し、各市町村教委がいかなる事情で、いかなる判断をしたのかを明らかにするものである。現在、文科省が学校統廃合の新たな指針を打ち出しているが、こういった統一的な上からの指針が、市町村レベルではどのように受け止められるのかについて、解明することにつなげる。 第3に、炭鉱閉山に伴う廃校の子どもたちへの影響の分析である。これは、直接は市町村合併とは関連がないが、学校統廃合による影響を子どもたちの視点から分析することで、学校統廃合の実態をより適切に把握するために活用する。
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Causes of Carryover |
第1に、佐渡市での公民館調査の実施に課題が生じたためである。公民館分館調査を計画したが、個人情報保護を理由に、分館長の連絡先の開示が拒否された。その代わり、年度初めの分館長会議での調査票配布を認めていただいたため、平成27年度に実施することになる。 第2に、茨城県内での調査計画の変更が生じたためである。当初は特定市町村を対象として、市町村合併と学校統廃合の関連を明らかにする調査を企画していた。しかし、調査を進めるなかで、各市町村の状況が多様であり、より広く各市町村を対象とした調査を実施する必要があり、平成27年度にこの点での調査を実施することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由とも重なるが、第1に、新潟県佐渡市での公民館分館長を対象とした調査の費用、ならびに、第2に、茨城県内での市町村教委を対象とした調査の費用に充てる。また、それぞれの調査の成果報告のためにも、費用を支出する予定である。
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