2015 Fiscal Year Research-status Report
圧縮性流体の基礎方程式系に現れる非線形波の安定性理論
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24740091
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中村 徹 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (90432898)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 解析学 / 偏微分方程式論 / 圧縮性流体 / 漸近解析 / 非線形安定性 / 粘性保存則 / エネルギー法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題4年目に当たる平成27年度は, これまでの研究に引き続き圧縮性粘性流体のモデル方程式系を包括するような一般的な対称双曲・放物型偏微分方程式系を1次元半空間上で考察し, 境界層解と呼ばれる定常解の存在性及び漸近安定性に関する研究に取り組んだ. 具体的には前年度に解析した縮退定常解の漸近安定性に関する条件の見直しを行った. 前年度に示した縮退定常解の漸近安定性の証明においては, 低回の基本評価の導出の際に縮退性による困難さが生じた為, 流束関数は0固有値に対応する固有ベクトルの方向に関して凸であるという仮定を課し, 定常解の導関数を係数として持つ低回項の符号が正となるようにした. ところが具体的なモデル方程式系においては, この仮定を満たさないものも存在していることが発覚したため, 仮定の見直しと証明の改良を行った. すなわち, 具体的なモデル方程式系に対して縮退定常解が現れる状況では, 0以外の特性速度は全て負になっている点に着目し, 定常解による重み関数を用いた重み付きエネルギー法を適用した. これにより低回項と部分積分により生じる移流項との組み合わせにより低回項の正値性を得ることが可能となり, 流束関数の凸性を仮定すること無く$L^2$評価を導出することに成功した. 以上の研究により, 前年度の研究では技術的理由により課していた仮定の排除することが出来, さらに具体的なモデル方程式系において現れる縮退定常解の存在性・漸近安定性を包括するような一般論の構築に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では定常波の漸近安定性を証明することが目標であったため, 研究実績の概要欄に記載した通りおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までの研究において非縮退及び縮退境界層解の存在性・漸近安定性を証明することに成功した. 今後の研究計画としては, 漸近安定性に関する時間漸近率を求めることが挙げられる. 過去の研究においては具体的なモデル方程式に現れる縮退定常解への時間漸近率には上限値が存在した. 本研究課題で扱っている一般的な連立系に対しても同様に上限値が存在するかどうかを検証したい.
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Causes of Carryover |
平成27年度にドイツで開催された国際研究集会において本研究課題に関わる成果発表及び研究交流を行う予定であったが, 講義や学内業務が重なり研究集会への参加を断念した. その分の旅費が未使用額として生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本未使用額は平成28年度にドイツ, アメリカで開催予定の国際研究集会での成果発表のための旅費として使用する予定である.
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