2012 Fiscal Year Research-status Report
非線形拡散方程式の解の高次漸近展開の構築とその応用
Project/Area Number |
24740107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
川上 竜樹 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20546147)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非線形拡散方程式 / 高次漸近展開 |
Research Abstract |
本年度は研究実施計画に沿い、はじめに全空間における非線形拡散方程式の一般化, 次に半空間における非線形境界条件付き熱方程式の高次漸近展開に関する研究を行った。 まず全空間における非線形拡散方程式の一般化については、本研究の先攻研究と同様に東北大学の石毛和弘氏と共同研究を行い、これまでの先攻研究では扱う事のできなかった非線形項に解の微分が含まれる場合についても具体的な高次漸近展開の構成法を確立した。ここで得られた結果の具体的な応用例としては、, 最近特に活発に研究されている細胞性粘菌の凝集現象を記述したモデルの一つであるKeller-Segel系や移流拡散方程式などが挙げられる。本研究結果はすでに論文として投稿し、掲載決定済みである。 次に半空間における非線形境界条件付き熱方程式の高次漸近展開については、当初予定していた方法では解決できなかったため、境界に非線形性がある事を考慮した新しい関数を構成することにより、高次漸近展開の構成法を確立した。さらに、ここでは領域内部における高次漸近形への収束だけでなく、これまで扱われていない境界上における収束も示しており、今後本問題の爆発問題等への応用が期待できる。本研究結果は現在論文投稿中である。 また本年度はさらに次年度の研究実施計画の一部である非線形消散項付き波動方程式の漸近解析への応用についても研究した。ここでは、空間次元が3次元以下の問題に対して、非線形熱方程式において確立した漸近解析手法が有用である事を示し、これまで得られていなかったより詳細な漸近形への収束評価を得た。本研究は神戸大学の上田好寛氏と共同で行い、得られた結果はすでに論文として投稿し掲載決定済みである。また本研究に関しては空間次元の高次化、及びより高次の漸近展開の構成法の確立を目指し、継続して研究中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実績は先に挙げたように, 本来の研究目的及び研究実施計画を達成しただけではなく、次年度以降の研究実施計画の一部にも着手できている事からも、当初の計画以上に進展していると考えられる。 実際、当初計画していた全空間における非線形拡散方程式の一般化については論文として投稿するだけではなく、すでに世界有数の国際雑誌への掲載が決定しており、研究成果の重要性が伺える。またいくつかの国内外の研究集会で講演を行い、結果だけでなくここで用いた手法についても非常に多くの研究者の興味を引いており、国内外問わず今後の応用が期待されている。 また半空間における非線形境界条件付き熱方程式の高次漸近展開について得られた成果についても既に国際雑誌への投稿を終えており、またいくつかの国内外の研究集会において講演うを通して一定以上の評価を得ていることからも、当初の計画以上の成果が得られていると考えられる。また今回得られた成果は今後より非線形性が強く現れるような場合を考察するにあたっての基礎となる成果であり、今後の継続研究への足がかりとしても十分な成果が得られたと言える。 また当初は次年度以降に計画していた非線形消散項付き波動方程式の漸近解析への応用についても既に論文として国際雑誌に掲載が受理されており、この点は当初の研究計画より特出して進展している点と言える。また本研究については先の研究実績でも触れたように、空間の高次元化等の継続研究を行っており、本研究対象に対する研究実施計画の前倒しも視野に入れられる状況になっている。 以上の理由により本年度は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず第一に挙げられるのは半空間における時間発展する境界条件付き半線形楕円型方程式の時間大域解の存在・非存在に関する研究である。ここでは大域解の存在と非存在を分ける藤田指数の導出及び大域解の減衰評価、さらに高次漸近展開の構築を目指し、第一漸近形の決定を目標とする。ここでは空間次元が2次元以上の問題について考察するが、楕円型方程式の基本解の構造からも空間2次元と3次元以上のそれぞれについて分けて考察していく。実際3次元以上の場合については既に一定の結果を得ており論文の作成を目指している。本研究はComenius大学のMarek Fila氏との先攻研究の継続研究にあたるため、本研究に対しても共同で研究を行っていく。 次に挙げられるのは分数冪拡散方程式や重調和作用素を主要部とする非線形拡散方程式の解の高次展開である。本問題に関しては積分核として一般化された熱核を持つような積分方程式を研究対象とし、まず解の時間大域存在のための十分条件の考察を行う。その後、先攻研究である全空間の非線形拡散方程式の解の高次漸近展開理論を応用・発展する事で解の高次漸近展開の構築を目指す。具体的な方針としては初期値の合成績で記述されている線形部分と非線形項が含まれている非線形部分のそれぞれに対して高次展開を構築する事を目指す。本研究は東北大学の石毛和弘氏との先攻研究からの継続研究であり、共同で研究を進めていく。 さらに消散構造を持つ様々な発展方程式の漸近解析についても着手していく。これは先に挙げた非線形消散項付き波動方程式に関する継続研究を含む形で行う。方向性としてはより高次の漸近展開の構築や空間次元の高次元化とともに、主要部の一般化についても考察していく。その際、解の時間大域存在等からの考察が必要になると思われる。 以上を中心に今後研究を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず次年度使用額が発生した背景は年度末のスペインのBCAMへの出張に関して現地滞在費用を先方が負担してくれたため、滞在費として充当していた分が不要となり、また年度末であるため物品の購入や他の出張に充当する事が不可能であったため次年度へ持ち越した。また本年度は計算機の購入を予定していたが、国内外の研究集会への参加が重なり、十分な予算を確保できなかったため、当該経費を次年度の経費へ持ち越す事で、再度購入を検討したい。また当該研究分野における最新の専門書は今後の研究において必要不可欠であるため、専門書の購入を物品費から使用予定である。 さらに今後の研究計画においてComenius大学のMarek Fila氏及び東北大学の石毛和弘氏と綿密な研究打ち合わせが必要不可欠である事、重ねて次年度は8月末にプラハで開催される国際研究集会への参加を予定しており、国内旅費及び国外旅費として相当額を使用する予定である。
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Research Products
(10 results)