2013 Fiscal Year Research-status Report
非線形拡散方程式の解の高次漸近展開の構築とその応用
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24740107
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
川上 竜樹 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20546147)
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Keywords | 動的境界条件 / 非線形積分方程式 / 半線形楕円型方程式 / 分数冪拡散方程式 / 高次漸近展開 |
Research Abstract |
本年度は研究実施計画に基づき、まず動的境界条件付き半線形楕円型方程式の時間大域解の存在・非存在に関する研究を行った。本問題に関しては当初の予定通り東北大学の石毛和弘氏とComenius大学のMarek Fila氏と共同研究を行い、空間3次元以上の場合と空間2次元の場合それぞれについて時間大域可解性を分ける非線形性の指数を導出した。さらにここで得られた小さな時間大域解についてはその第一漸近形がPoisson核になることも示した。これらについては既に論文として投稿し、国際雑誌にそれぞれ掲載済みである。 次に次年度の研究実施計画の一部である分数冪拡散や高階放物型方程式を含む枠組みにおける非線形積分方程式に関する研究を行った。本研究は積分方程式の積分核を自己相似性、半群性、正則性、さらに空間減衰評価に着目し、拡散方程式の積分核である熱核から一般化することにより、昨年度石毛氏と行った全空間における非線形拡散方程式の解の高次漸近展開の構築の拡散項に対する一般化に相当するものへ拡張したものである。一方で積分核に着目し解の大域可解性や漸近挙動を考察した研究はこれまでほとんどなく、解の大域可解性からの考察が必要であった。そこで、まず石毛氏と石毛氏の博士課程の学生である小林加奈子氏との共同研究により、解の大域可解性に関する非線形性並びに初期値に対する十分条件を得た。さらに解が積分核と同じ減衰評価をもつ場合に解の第一漸近形が積分核の定数倍になることも示した。本研究結果についても既に論文として投稿し、国際雑誌に掲載決定済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実績は先に挙げたように、当初計画していた内容を大きく上回り、次年度以降の研究実施計画にまで着手できていることからも、当初の計画以上に進展していると考えられる。 実際、動的境界条件付き半線形楕円型方程式の大域可解性に関する結果については、これまで既存の結果がない問題に対して解を構築しただけでなく、楕円型方程式としての臨界指数まで到達しており、発展方程式として新しい問題を提起しただけでなく、楕円型方程式の研究に対する新しいアプローチを提案したものと言える。既に論文として2本が国際雑誌に掲載されていること、また国内外の研究集会における講演を通して、多くの研究者から一定の評価を得ていることからも当初の計画以上に研究が進展していると言える。 また次年度以降に計画していた分数冪拡散や高階放物型方程式を含む枠組みにおける非線形積分方程式に関する研究については、本年度の研究により大域解の存在とその減衰評価が得られており、高次漸近展開の構築の基礎が完成したと言える。また同時に第一漸近形の導出も行っており、線形部分に関する高次漸近展開の足掛かりが得られている。今回の問題で扱っている積分核及び非線形性は、今なお個々の問題において高次漸近展開が継続的に研究されている問題の多くを含むことからも非常に汎用性が高いものとして得られたこと、また論文として世界有数の国際雑誌へ掲載が決定されていることからも当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず第一に挙げられるのは一般化された熱核を積分核として持つ非線形積分方程式の解の高次漸近展開の構築である。本年度の研究実績でも挙げた通り、既に積分核を第一漸近形とする解の存在は得られており、これを元に線形部分および非線形部分それぞれの高次漸近展開を構築する。また近年、移流拡散方程式や細胞性粘菌の凝集現象を記述したKeller-Segel系に関する高次漸近展開の研究が盛んに行われていることから、非線形性をこれらの問題を含む形に特化したものに対しても考察していく。これらの研究は東北大学の石毛和弘氏並びに小林加奈子氏との共同研究に対する継続研究であるため、本研究に対しても共同で研究を行っていく。 次に挙げられるのは動的境界条件付き半線形楕円型方程式に関する研究である。これまでの研究において大域可解性に関する臨界指数及び小さな初期値に対する大域解とその漸近挙動については得られているが、それ以外については以前未解決である。特に臨界及び劣臨界における局所可解性や有臨界における空間遠方での空間減衰に関する臨界指数の研究は楕円型方程式の観点からも必要不可欠である。これらについては石毛氏並びにComenius大学のMarek Fila氏との共同研究の継続研究にあたるものであり、共同で研究を進めていく。 さらに熱方程式の解の形状に関する研究についても行っていく。解の高次漸近展開は解の形状と密接に関係していることからも、どのような情報が観測できれば解の幾何学的な情報を決定できるかという問いは非常にシンプルかつ重要な問題である。ここでは解が相似な等高面を持つかについて過剰決定問題を考察する。本研究は東北大学の坂口茂氏と共同で研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に計算機の購入を検討していたが、1月に研究打ち合わせ並びに研究集会における講演が急遽決まったため、旅費として計上していた額を上回ることになった。そのため計算機購入費を旅費に充当したため差額では計算機の購入ができなかった。計算機の購入は最優先検討事項だが、次年度は既に海外出張が2回確定していたため、この差額と合算することにより計算機の購入を検討するべく次年度への持ち越した。 まず5月末にイタリアのガエタで開催される8th European Conference on Elliptic and Parabolic Problemsと7月にスペインのマドリッドで開催されるThe 10th AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applicationsにおける講演のための渡航費として相当額を国外旅費として使用する。また成果発表や情報収集のための研究集会参加や研究連絡のために国内旅費を使用予定である。 物品費については、まず計算機の購入のため本年度の持ち越し金と合算し使用する予定である。さらに最新の専門書は今後の研究に必要不可欠であるため、専門書の購入費を物品費から使用予定である。
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Research Products
(12 results)