2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740232
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土射津 昌久 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70362225)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子性導体 / 多軌道系 / 強相関電子系 / 物性理論 |
Research Abstract |
本研究では、分子性導体における「分子の内部自由度」に起因した現象を系統的に理解することを目的とし、これまでに、分子内自由度をもつ新たな候補の一つとして、電荷移動錯体 (TTM-TTP)I3 に着目してきた。第一原理計算に基づき、この系が多軌道性をもつことを明らかにし、分子を仮想的に複数のフラグメントに分割した「フラグメント分子軌道」に基づくモデルを提案してきた。本年度は、このフラグメントモデルを厳密対角化法により解析し、基底状態相図を求め、(TTM-TTP)I3 で実現する分子内電荷秩序パターンの理論予測を行った。さらに、分子内電荷秩序状態での光学電気伝導度を理論的に解析した。その結果、分子内電荷秩序形成に起因した特有のピーク構造が出現し、それまで未解明であった実験結果を説明できることができた。このことは、フラグメントモデルの有用性を示している。また、ジチオレン錯体系[Pd(dmit)2] におけるフラグメントモデルの提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電荷移動錯体(TTM-TTP)I3とジチオレン錯体系[Pd(dmit)2] におけるフラグメントモデルの有用性が確認でき、これらの系で共通する特徴を見い出すことに成功し、本研究の目的の一つである「分子内自由度をもつ分子凝縮系」の系統的理解が得られた。特に、(TTM-TTP)I3においては、光学電気伝導度測定で未解明であった異常な吸収ピーク構造を、フラグメントモデルに基づいて理論的に解明することに成功し、この系において、分子の内部自由度の重要性、およびフラグメント描像の有用性が確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究を引き続き推進するとともに、分子内自由度をもつ分子素子系の伝導特性の解析を行う。特に、分子の「近藤効果」が人工的にコントロールできることで注目されているフタロシアニン分子素子に着目し、フタロシアニン分子の中心金属の役割を理論的に明らかにするため、「ミクロなスケールの分子内自由度を記述する量子化学的アプローチ」である第一原理計算と、「マクロなスケールでの電子相関効果を記述する物理的アプローチ」である繰り込み群法を組み合わせる研究の方向性の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ワークステーション:8000千円 旅費:400千円 パーソナルコンピュータ:200千円 コンピュータソフトウェア:50千円
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Research Products
(5 results)