2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740247
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
家田 淳一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (20463797)
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Keywords | スピン流 / スピン起電力 / スピン軌道相互作用 / 磁化ダイナミクス / 界面磁気異方性 / ラシュバ効果 / 電界制御 / スピン回転結合 |
Research Abstract |
1 スピン起電力の理論とこれまでに行われた実験に関する初めての総合報告を発表した(SPIN)。 2 スピン起電力の基礎理論の拡張の一環として、スピン軌道相互作用の影響を調べ、磁化が一様・静的でも電場の時間変化でスピン起電力が発現することを示す全く新しい理論式を導出した(Physical Review B)。 3 上記2の研究をさらに発展させることで、ラシュバ型スピン軌道相互作用による界面磁気異方性の新しい発現機構を発見し、電界による強磁性超薄膜の磁気を制御する手法の提案を行った(Scientific Reports)。 4 スピン起電力の応用研究として、(株)日立と共同で2件の特許出願(発明名称:磁気メモリ、スピン流制御装置)を果たした。 5 力学的スピン流生成の手法として、スピン回転結合に基づく微視的理論構築を行った。この成果は、力学的スピン現象に関するSolid State Communications誌の特別号"Spin Mechanics"に掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中心テーマであるスピン起電力に関しては、論文発表、会議発表、特許出願の積み重ねにより着実に成果を上げている。これに加え、Scientific Reports誌掲載の磁気異方性の電界制御に関する成果は、所属機関からプレス発表され、日刊工業新聞、化学工業日報、Phys.orgやMaterials Today等のWeb newsに掲載されるとともに、関連分野の研究者から個別の問い合わせ寄せられるなど大きな反響を得ている。特に、物質・材料研究機構の実験グループが本提案の実証実験に着手しており、現在理論的な側面から指導を行っている。また、本研究内容に関する招待講演(日本物理学会2014年秋季大会)の依頼を受けている。これは、本研究計画の研究内容をはるかに上回る研究成果である。以上のことから、上記区分を選定した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのスピン起電力の実験実施例では、いずれも単一の磁壁や磁気渦などシンプルなナノ磁気構造が対象となっており、理論的にも一電子描像、断熱近似の範囲内で取り扱えるものが主流であった。また、実験的に観測されている出力電圧の大きさは高々マイクロボルトのオーダーであり、今後の物性実験応用、さらに将来的な産業応用に向けて出力増大は必須の課題である。 そこで本年度は、複数の磁壁や磁気渦の集団運動によりスピン起電力出力が積算するような状況を探索し、その出力信号の増大に向け、ナノ構造の形状、材料、励起パターン等の最適化を行う。これと同時に、これまで無視されてきた電子相関の効果や、非断熱的プロセスの影響なども考慮に入れ、スピン起電力のさらなる理論展開をはかる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ライフイベント(妻の第4子妊娠・出産)のため、本研究課題で予定していた海外出張等を中止した。それにより、当該年度主に旅費として計上していた予算の執行が行われなかった。 主に前項で中止となった海外出張旅費として使用する。特に、本研究課題に関連した共同研究を行う独マインツ大学のJ. Sinova研究室への滞在を計画している。
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