2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24740289
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菱田 真史 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70519058)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 脂質二重膜 / 自己組織化構造形成 / 水和水 / テラヘルツ分光 / X線小角散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
最も重要な成果は生体膜融合に対する水が協同性の解明(M. Hishida et al., J. Phys. Soc. Jpn., 2014)にある。ここではテラヘルツ分光により膜表面の水和状態の脂質依存性を、微入射小角X線散乱により水和状態を無理やり変えた時の膜構造の変化を、それぞれ調べた結果、水和水の量によって膜融合効率が変化すること、水和水の量は脂質分子の化学構造によって決まることがわかった。つまり、化学構造が物理的相互作用を決定し、それが膜融合という生命現象を司るという学際的知見が得られた。本研究は、広く注目を集め、日本化学会コロイド界面化学会の部会誌(菱田真史, C&I Commun., 2014)にて解説記事としても発表している。そのほかにも、本研究では膜間相互作用に対する塩のイオン種依存性から、やはり膜間相互作用にも水が役割を持つことを間接的に示すことができた(M. Hishida et al., Langmuir, 2014)。また膜表面での水の配向性がイオン種によって異なること(M. Hishida et al., submitted, 2015)がこの原因である可能性が高いことも見出した。今後相互作用と水の関係について理論面からも詳細に調べる必要がある。そのほかにも膜の自己組織化構造に対する添加分子の影響を明らかにすることもできた(K. Nakazawa, M. Hishida et al., Chem. Lett. 2014, M. Hishida et al., submitted, 2015)。これらの成果を総括すると、水の状態(水和状態)と脂質や界面活性剤の自己組織化構造の形成との密接な関わりを明確に示すことができたと言える。本研究は、今後、ソフトマターや生体分子の自己組織化に対する水の役割を分子レベルで理解するための足掛かりとなると期待される。
|