2013 Fiscal Year Research-status Report
地球の自転速度の変動が、地球外核対流と地球磁場に与える影響を知る
Project/Area Number |
24740311
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
宮腰 剛広 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (60435807)
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Keywords | 地磁気変動 / 地球ダイナモ |
Research Abstract |
本課題では地球磁場の変動、特に最近の古地磁気研究によって明らかになってきた数万年周期における数十%もの変動のメカニズムについて、気候変動との関連に着目して主にスーパーコンピュータによる数値シミュレーションにより調べている。地磁気は地球内部の外核における液体金属の対流により生み出されている。それは太陽風や宇宙線から地球表層を保護しているため、地球上の生物にも影響を及ぼしている。この保護効果は地球磁場の強さに依存するため、その変動は表層環境にも影響を及ぼしている可能性がある。また宇宙天気・宇宙気候研究においても、地磁気強度は最重要パラメータの一つであるため、その変動メカニズムを理解する事が重要となる。 このような地磁気変動について、氷期―間氷期サイクルにより大陸氷床の消長が生じると、地球表面の水の質量分布が変化するため慣性モーメントの変化が生じ、それが自転速度を変動させる事により外核内対流と地磁気を変動させるというメカニズムが提案されている(浜野、1992)。しかしながらこれまでに自転速度の変動を考慮した地磁気生成と維持(地球ダイナモ)のシミュレーションは行われていなかった。 本課題では2万年の周期を持つ自転速度変動を考慮した地球ダイナモシミュレーションを実施する事により、実際に数十%の地磁気変動が生じる事を見出した。本年度はシミュレーションデータの詳細な解析により自転速度変動が外核内対流にどのような変動を生じさせ、それがどのようにして地球磁場の変動を引き起こすのかについてのメカニズムをほぼ明らかにする事が出来た。 本年度は以上の成果を、アメリカ物理学会が発行する査読付学術雑誌である「Physical Review Letters」に発表した。また所属機関(海洋研究開発機構)よりプレスリリースが行われ、新聞等に成果が紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、自転速度変動が対流運動の特に経度方向の流れに影響を与えること、またジュール散逸の時間変動が地磁気変動に重要なことなど、自転速度変動により具体的にどのような変動が外核内に生じるかと、それが地磁気変動をどのように生じさせるかのメカニズムをほぼ明らかにする事が出来た。 また成果発表の点ではPhysical Review Lettersに論文が掲載されると共に、アメリカ物理学会が発行する一般向けオンラインジャーナル「Physics」で成果が紹介された。また前述のとおりプレスリリースが行われ、国内においても新聞等のメディアを通じて研究成果が紹介された。 以上により、研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、自転速度変動の効果は、無次元パラメータのEkman数(=粘性力/コリオリ力)に依存する予備的結果が得られている。これはEkman数が自転の影響力を示すものなので直観的に理解しやすいものであるが、今後はEkman数に加え他の無次元パラメータであるRayleigh数やPrandtl数などを変えた場合にどのような変化を示すかについても調べていく予定である。 また、氷期―間氷期サイクルによる気候変動はミランコビッチ・サイクルにより生じると考えられており、本研究でも自転速度変動の周期としてミランコビッチ・サイクルの一つに非常に近い2万年周期の場合について特に詳しく解析を進めている。地磁気変動はこれ以外にもさまざまな周期があり、例えば振幅は数%と小さいが数十年周期で生じる地磁気変動もある。これらの周期についてはミランコビッチ・サイクルのような明確な自転速度変動のメカニズムは知られていないが、自転速度の変動との関連が示唆される地磁気変動もある。シミュレーションからはこのような周期の場合も調べる事が可能なため、そのような場合についても解析を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文執筆や論文に掲載する図の作成に使用しているパソコンが古くなってきたため、次年度の経費の一部と合算して購入する事を主な理由として次年度に一部を繰り越した。 上記パソコンの購入のほか、学会への参加費や旅費、ハードディスクなどの必要備品の購入等に主に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)