2012 Fiscal Year Research-status Report
レーザー生成非一様プラブマ中の衝撃波による磁場増幅
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24740369
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蔵満 康浩 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 特任助教(常勤) (70456929)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 磁場 / 衝撃波 / レーザー / 実験室宇宙物理 / 宇宙線 / 密度の非一様 / 不安定性 |
Research Abstract |
超新星残骸中で観測される非常に早い宇宙線の加速には、磁場が背景レベルから100倍以上増幅している必要があると考えられている。近年の磁気流体(MHD)シミュレーションではリヒトマイヤー・メシコフ不安定性(RMI)を介した渦の生成に伴う磁場の増幅が示唆されているが、天文学的な観測からこれを確かめる術は無い。これを実証する唯一の方法は実験室における模擬実験を通した原理の検証である。 RMIを介した磁場増幅に必要な要素は、衝撃波、密度の非一様、さらに外部磁場である。我々はこれまでそれぞれの要素について実験を重ねてきており、これら全てを含んだ実験も行なっている。平成24年度は、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターのGekko XII(GXII)レーザーを用いた実験を行なった。平行平板ターゲット(1 cm間隔)を3本のビーム(3倍高調波)で照射し非一様プラズマを生成し、これに衝撃波を相互作用させることでRMIを励起した。永久磁石を用い弱い(0.1~0.3 T)磁場を印加し、プラズマの時空間発展を側面からのプローブレーザーを用いたシャドー計測と干渉計測により撮像し、またプラズマからの発光を同様に捉えた。高速のゲート付きカメラによる2次元像と、ストリークカメラを用いたプラズマの軸付近の時間発展により、RMIに特徴的な構造の撮像と衝撃波速度の計測に成功している。磁場の計測には購入した3軸の磁気プローブを用いて行なった。磁場のデータは現在解析中であるが、外部磁場の有無や雰囲気のプラズマの有無により優位な差を見せている。チャンバー内に運ばれる基本波と2倍高調波による磁気プローブの破損をさけるために、磁気プローブをプラズマの軸から3 cm離して設置する必要があった。磁場の増幅はRMIの渦が生成されるところでローカルに起こるため、得られた磁場が何に起因するものかは今後詳細に調べる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学計測を用いたグローバルなプラズマのイメージングと磁気プローブを用いたローカルな磁場の観測という、実験室でしかできない計測を生かし、宇宙では観測し得ない現象の解明を進めている。 大型レーザーを用い、非一様磁化プラズマを生成し、 非一様面を衝撃波が通過する際に起こる構造の時間発展を調べた。最初の目標に掲げたRMIに特徴的なマッシュルーム的な構造を観測することに成功した。プラズマが引き延ばされ、渦が生成されることは、MHDプラズマ中で磁場を生成することに対応している。プラズマ構造のイメージングに加え、磁場のローカルな直接計測も行なった。これは上に述べた理由から渦が生成された現場から離れているため、MHDシミュレーションに見られるような強い磁場の増幅を検証するには至っていない。 電磁石を用いた実験を計画していたが、大容量のコンデンサを必要とする点と、GXIIのチャンバーでは足場が悪くその設置スペースが限られる点から安全面の問題をクリアする必要がある。また、最近の理論・数値計算の報告によると、RMIで効率よく磁場を増幅するには初期磁場は弱い方がよいことが分かっている [Sano et al., Astrophys. J, 756, 126 2012]。イギリスのラザフォード・アップルトン研究所のVulcanレーザーを用いた実験では、電磁石を用いて比較的強い磁場を印加した実験を行なったが、衝撃波での磁場の圧縮により下流の磁場強度が上がり、RMIによる磁場の増幅が制限されるという結果が得られた。これらの理由から強磁場の下でのRMIによる磁場増幅実験は今後行なわず、永久磁石を用いた弱磁場下での実験を行なう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続きレーザーを用いた超新星残骸におけるRMIを介した磁場増幅の模擬実験を行なう。GXIIレーザーを複数本用いオフセットをかけることで非一様プラズマを外場中に生成し、平行平板ターゲットにより複数の衝撃波を励起し、その相互作用を可視の光学計測により撮像する。また、磁気プローブを用いることで磁場のローカルな観測を行う。磁気プローブは上に述べた理由から、これ以上プラズマの軸に近づけることはできないので、ファラデー回転を用いた2角度の偏光計測 [Yoneda et al., Phys. Rev. Lett., 109, 125004, 2012] により、磁場計測を行なう。これは、GXII実験の共同研究として開発した強磁場の計測器で、衝撃波の圧縮程度の磁場では計測限界に届かないと考えられるが、RMIにより100倍以上の磁場増幅が起こるならば計測範囲に入ってくると考えられる。このため、これまでは平行平板の間隔よりも直径の大きい円柱形の永久磁石を用いて外部磁場を印加していたが、リング状の永久磁石を2つ用いることでプラズマの軸に垂直であるが、ファラデー回転用のプローブには平行になるような磁場配位を用いる。 さらにこれに加えてトムソン散乱計測を用いたプラズマの諸量のローカルな計測を行なう。これまで無衝突衝撃波生成実験でトムソン散乱計測を用いて、衝撃波の上流と下流両方の物理量のローカルな計測に成功している。これを磁場増幅実験に用いることで、渦の生成や、乱流の時間発展の知見が得られると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に、新しいリング状の永久磁石を用いたターゲットの作成に用いる。大型のリング状磁石を複数個とそれを保持するホルダを作成する。これまでは、購入した磁気プローブとオックスフォード大のチームが持ち込んだ同様の磁気プローブを用いた磁場の2点観測を行なったが、前回の実験で同大の磁気プローブをプラズマとレーザーに近づけすぎたため、レーザーの散乱光かターゲットのデブリ、もしくはその両方により磁気プローブが破損した。次年度は磁場の2点観測を継続するための部品も購入する予定である。 また、得られた研究成果の報告のためにフランス・サンマロで開かれるThe 4th International Conference on High Energy Density Physics (ICHED 2013) に、幕張で開かれるThe 12th Asia Pacific Physics Conference (APPC12) に参加する予定である。
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Research Products
(11 results)