2012 Fiscal Year Research-status Report
配糖化タンパクの収束的かつ自在な供給法開発による化学生物学的研究の堅固な基盤構築
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24750154
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 要 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10611783)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 糖ペプチド / 糖タンパク / チオカルボン酸 |
Research Abstract |
修飾タンパクの収束的化学合成に向けて,新反応の開発を行った.まず,重要な合成中間体である側鎖にチオカルボン酸を有するペプチドの合成法開発に先立ち,高分子量のポリペプチド合成法として,C-末端アシルアジドとN-末端のgamma-チオアスパラギン酸の脱窒素および脱硫を伴うイミン形成反応と,続く一級アミンへのアシル転移によるカップリング反応を開発し論文発表した.アシル転移によるカップリング反応は,近年,ネイティヴケミカルライゲーション(NCL)法として高分子量ペプチドの合成に広く用いられているが,アスパラギン酸残基に適用した例はなく,本手法はシステイン-アスパラギン間の天然型結合を収束的に形成する新しい方法論となった.しかし,本研究課題が目標のひとつに据える,非対称チオカルボン酸無水物を経てシステイン-チオアスパラギン酸間の結合を形成する反応の完成には未だ至っておらず,さらなる検討が必要である.現在は,上述の収束的チオカルボン酸合成法の検討に加え,バックアップ戦略による側鎖にチオカルボン酸を有するペプチドの合成も検討中である.すなわち,ペプチド合成に広く用いられているBoc基-TFAの化学に基づく固相合成法と両立するチオカルボン酸前駆体をgamma-位に有するアスパラギン酸を用いて,ペプチド鎖伸長を行う逐次的戦略により合成を行っている.側鎖チオカルボン酸の前駆体として,脱Bocや脱Fmocと直交する条件で脱保護可能なチオエステルを開発した. また,25年度実施予定の反応開発を前倒しして行った.チオカルボン酸を足掛かりとしてグリコシルエステル結合型のペプチドの修飾を行う新手法として,単純なチオカルボン酸を有するモデル基質を用いたグリコシル化反応の開発を行っている.現在までに糖供与体の候補として種々の基質の合成を達成しており,反応条件の探索を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は24年度で達成予定のI.側鎖にチオカルボン酸を有するペプチドの合成法の開発および25年度で達成予定のII.先述のチオカルボン酸を足掛かりとしたペプチドの修飾法の開発の2つの主要な反応開発で構成されている.Iについては,最初に選択した挑戦的戦略では達成に思いのほか時間を要することが示唆されたので,現有のデータで一旦まとめて論文化するとともに,より確実性あるバックアップ戦略に変更した.その結果,目標達成までもう数か月の猶予が必要である.一方で,IIについては,検討に用いる基質を単純化したモデル実験を用いることで,計画を前倒しし予定よりも早く反応開発に着手でき,早くも多くの知見を得ている.総じて,本研究課題は順調に進行していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
側鎖にチオカルボン酸を有するペプチドの合成法の開発においては,ペプチド合成に広く用いられているBoc基-TFAの化学に基づく固相合成法と両立する新規のチオカルボン酸前駆体を用いることで,逐次的戦略により達成できる目処がついており,手法の有用性を示すデータを整えて発表する.すなわち,申請者は既に,要件を満たすチオカルボン酸前駆体として,alpha-メチルフェナシル(Mpa)チオエステルを開発しており,この戦略により数十量体のオリゴペプチドの合成が可能であることを示す.一方,チオカルボン酸を足掛かりとしたグリコシルアミド,さらにはエステルによるペプチドの修飾法の開発においては,既に合成が完了している種々の糖供与体(脱離基として種々のフェノキシ基を有するグリコシルカーボナートなど)を用いて,種々のモデルチオカルボン酸で求核置換し,混合チオカルボン酸-炭酸無水物と続く酸化硫化炭素を経てグリコシルエステルを得る反応条件を探索し,最適化を行う.もし,ここで開発するエステル化反応等の修飾反応の効率が十分に上がらない場合のバックアップ戦略として,適切にアスパラギン酸側鎖が脱保護可能なペプチドを合成し,ADP-リボース部分と縮合する戦略をバックアッププランとする.アノマー位の立体を制御することは困難であるが,両アノマーを分取できる条件の探索に時間とコストを割くことで,修飾タンパクの合成が可能であると期待できる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成25年度請求額と合わせ,平成25年度の研究遂行に使用する予定である.
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