2013 Fiscal Year Research-status Report
ネットワークシステムに対する分散制御器設計理論の体系化
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24760336
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
櫻間 一徳 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10377020)
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Keywords | ネットワークシステム / 分散制御 / 制御器設計 / マルチエージェントシステム |
Research Abstract |
本研究では,ネットワークでつながれた要素(サーバーやロボット)がネットワーク上で情報交換をしながら,目的のタスクを達成するための分散制御器を設計する問題を考えている.分散制御器とは,ネットワーク上で直接繋がれた相手の情報のみを用いる制御器である.これによって,各自が扱う情報量および計算負荷が低減する.しかし,ネットワークが疎になるにつれ利用できる情報が減るため,必ずしも目的が達成できなくなることがある.したがって,目的を近似的に解決することを許し,何らかの意味で最も目的を達成している分散制御器を設計する必要がある. 本年度の最も重要な結果は,ネットワークシステムにおける分散制御器の最適設計の手順を確立したことである.これまで,分散制御設計は試行錯誤的に行われてきたが,本手法によって,機械的な手順で最適なものを設計できるようになった.手順は次の通りである.(i)与えられたネットワークにおける分散制御器をパラメータ化する.これより,分散制御器は自由度をもつある種の構造によって表現される.(ii)タスクの達成度を評価する関数を設定する.タスクは要素間の相対関係によって表現されるため,集合上で0をとる関数となる.(iii)分散制御器の自由度に具体的な形を与え,評価関数の意味で最適な分散制御器を設計する. 次に,本研究のインパクトを高める取り組みとして,アクティブノイズコントロール(ANC)システムおよびスマートグリッドシステムに対する分散制御器を設計した.ANCシステムではシミュレーションによって効果を確認した.スマートグリッドに関しては,これまで中央集中的に行われている電力調整を,分散的に行うことができる可能性を示した.これは,我が国において今後,採用される見込の高い送配電分離において,電力供給の安定性を保証する重要な結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画にある「分散制御器の設計理論の確立とツール化」および「提案法の実用的な応用」の主要な部分を達成したことが理由である.ただし,当初の予定であったANCシステムの実験の代わりに,よりインパクトの高いスマートグリッドに関する研究を行った.その結果,査読付き学術論文誌1本,査読付き国際会議4本,国内会議1本,解説論文2本が採録された.さらに,国内会議における発表によって「計測自動制御学会 2014年制御部門大会賞」を受賞した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「分散制御器の設計理論の確立とツール化」および「提案法の実用的な応用」の残りを実行する.まず,分散制御器設計のツールとして,ネットワークとタスクを与えると自動的に最適な分散制御器が与えられるMatlabのコマンドを開発する.次に,提案法の実用的な応用として,ANCシステムの評価実験を行う.さらに,より社会的インパクトの大きいテーマとして,スマートグリッドへの応用を進める.最適な分散制御器によって,安定性をどの程度確保できるのかを検証する必要がある.スマートグリッドについては,世界的情勢について情報収集する必要があるため,計画を変更し,海外の研究機関における研究調査を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アクティブノイズコントロール (ANC) システムの実験について,現状ではシミュレーションによる検証が終わった段階であり,本年度行う予定であった実験システムの構築には至らなかった. ANCシステムの実験については,1年間で終わるように縮小して行う.これと平行して,提案法の有用性をより積極的にアピールするため,スマートグリッドへの応用を行う.当初の計画から変更し,その調査研究のための旅費として使用する.
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