2012 Fiscal Year Research-status Report
陽電子消滅法による耐熱鋼の新しい余寿命予測法の開発
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24760573
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 耕治 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50344718)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | クリープ / 陽電子消滅 / 余寿命予測 |
Research Abstract |
本研究の目的は、特に空孔や転位などの空孔型欠陥に敏感な陽電子消滅法により、高温クリープ変形に伴う原子スケールの格子欠陥の初期挙動から耐熱鋼の余寿命予測を行うことである。そのために、今年度は、代表的な耐熱性フェライト鋼(9Cr-1Mo鋼)において、陽電子寿命測定法及び陽電子消滅同時計数ドップラー広がり測定法を用いて、さまざまなクリープ試験条件(系統的に変化させた温度、応力)下でクリープ変形させた試料について、さまざまなクリープ時間での陽電子寿命および陽電子消滅同時計数ドップラー広がり測定法による電子運動量分布測定を行い、測定結果のデータベースを構築した。その結果、平均陽電子寿命およびS-パラメータ(陽電子消滅同時計数ドップラー広がりスペクトル全体に対する低運動量領域の割合)が(極初期段階での増加を除けば)クリープ時間と共に減少するが、このとき、クリープ変形の遷移、定常、加速領域にほぼ対応して3段階で減少することが明らかとなった。さらに詳細に調べた結果、クリープ速度で見る各段階への変化するクリープ時間よりも少し早い時間で平均陽電子寿命およびSパラメータは変化した。クリープ極初期に、平均陽電子寿命およびS-パラメータが増加する場合があるが、これは炭化物の析出と密接に関係していると思われる。また、破断時の陽電子寿命およびS-パラメータが、クリープ条件試験条件(温度、応力)によらず、ほぼ同じであった(これは、クリープ破断時間を予測するときに大変有効である)。クリープ初期段階のデータからクリープ破断時間を高精度で予測するための方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表的な耐熱性フェライト鋼(9Cr-1Mo鋼)において、さまざまなクリープ試験条件(系統的に変化させた温度、応力)下でクリープ変形させた試料について、陽電子寿命および陽電子消滅同時計数ドップラー広がり測定法を行い、順調に測定データを取得することができた。クリープ試験条件で、陽電子消滅結果(平均陽電子寿命およびS-パラメータ)は系統的に変化しており、また、破断時の平均陽電子寿命およびS-パラメータが、クリープ条件試験条件(温度、応力)によらずほぼ同じであり、クリープ初期段階のデータからクリープ破断時間を予測するのに必要な方法の道筋が見えた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、陽電子寿命および陽電子消滅同時計数ドップラー広がり測定法を用いてさまざまなクリープ試験条件(系統的に変化させた温度、応力)下で高温クリープ変形させた試料について、陽電子寿命および陽電子消滅同時計数ドップラー広がり測定法による電子運動量分布測定を行う。測定結果を増やし、データベースを充実させ、より詳細に検討できるようにする。 次の段階は、クリープ初期段階でのデータからの高精度余寿命予測方法の開発である。測定結果のデータベースから温度依存性、応力依存性、クリープ時間依存性を明らかにし、余寿命予測を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に、液体窒素や試料作製および試料加工費などの消耗品および研究発表の成果報告などに使用する。
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