2013 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子消滅法による耐熱鋼の新しい余寿命予測法の開発
Project/Area Number |
24760573
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 耕治 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50344718)
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Keywords | 陽電子寿命法 / クリープ劣化 |
Research Abstract |
フェライト系耐熱鋼は現在火力発電の大径鋼管等に広く用いられており、クリープ劣化に伴う余寿命を早期に高精度で予測することは工業的に非常に重要である。陽電子消滅法は、空孔や転位などの原子スケールの格子欠陥を敏感に検出することが可能な手法である。そのため、この手法をクリープ耐熱鋼に適用することで、高温クリープ変形に伴う原子スケールの格子欠陥の初期挙動から耐熱鋼の余寿命予測を行うことが可能であるか検証を行った。 代表的な耐熱性フェライト鋼において、陽電子寿命測定法を用いて、さまざまなクリープ試験条件(系統的に変化させた温度、応力)下でクリープ変形させた試料について、さまざまなクリープ時間での平均陽電子寿命を求めた。 平均陽電子寿命はクリープ試験片のねじ部ではほとんど変化しないが、平行部はクリープ時間とともに減少し、ねじ部の温度効果と平行部の温度と歪みの効果の差を明瞭に捉えた。マルテンサイト変態で導入された転位や各種界面は、クリープ試験中に回復して数(面)密度は減少し、それに伴い平均陽電子寿命はクリープ時間とともに減少していることを示している。このことは、陽電子寿命法が空孔型欠陥の変化としてクリープ劣化を捉えていることを示している。さらに、平均陽電子寿命が(極初期段階での増加を除けば)クリープ時間と共に減少する時、クリープ変形の遷移、定常、加速領域にほぼ対応して3段階で減少することが明らかとなった。クリープ極初期段階での平均陽電子寿命の増加は、炭化物の析出と密接に関係している。余寿命予測は、平均陽電子寿命のクリープ時間変化を、ある関数(マスターカーブ)のパラメータの変化として捉え、パラメータの内外挿により、あるクリープ条件での変化を予測することで行った。本実験に用いた鋼種では、破断時間の10-20%程度のクリープ時間で、20%の精度で余寿命を予測した。
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