2012 Fiscal Year Research-status Report
イオン照射法によるシリコンカーバイドの照射クリープ機構に関する研究
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24760715
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 創介 京都大学, エネルギー理工学研究所, 助教 (10563984)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シリコンカーバイド / 照射損傷 / 電子顕微鏡 / 照射クリープ / スウェリング |
Research Abstract |
シリコンカーバイド(SiC)は高温強度特性に優れるため、原子炉材料として使用することが構想されている。課題は、中性子照射下で低温(400℃~)から照射クリープによる変形をきたすことであり、これが炉の運転温度を制限する要因になりうる。当初、照射線量に対して敏感に反応する時期は、照射のごく初期のみでありそれ以降は飽和傾向を示すと予測しており、これを証明することを第1の目的に、なぜそうなるかを明らかにすることを第2の目的にしていた。現在までに、照射下で応力を負荷するための試料ホルダの作製、および、照射実験をほぼ完了した。また、400℃から800℃の照射温度での加速器実験の結果から、1dpaまでの線量で照射クリープがほぼ飽和することを見出した。また、上記の各温度で、照射クリープひずみはスウェリングと線形関係を示すことを明確にした。電子顕微鏡観察から、照射クリープの主要因の一つはフランク転位ループの異方分布にあること、すなわち、応力軸に近い法線ベクトルを持つループが優先的に生成していることでることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の目的は、(1)照射クリープの線量依存性についてしらべることと、(2)照射クリープメカニズムの解明であった。1年目に実施予定であった(1)に関しては、0.001dpaから3dpaまでの間で、断続的に照射クリープを測定し、ひずみが飽和傾向を示すことを確認した。また、次年度以降の予定であった(2)に関しても、電子顕微鏡により、転位ループの異方性がそのメカニズムの一端を担うことをすでに確認している。また、当初にはなかったヘリウム効果に関する情報も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
照射クリープひずみとスウェリングに線形関係があること、また、その比例定数が照射温度によって決まることは、ある意味意外なことであり、より詳細なメカニズム解明は、この関係にあると考えている。今後は、より低線量で照射クリープひずみとスウェリングを測定し、線形関係が損傷初期(損傷初期に照射クリープの主要因と思われる転位ループの核などの形成が頻繁に起こる)においても維持されているのかどうかを詳細に調べる予定である。SiCのスウェリングの原因は点欠陥とSIAクラスターの蓄積によるが、これと比較することにより、上記を含めた照射クリープメカニズムのさらに詳細な情報が得られると考えている。また、照射の途中(すなわち、SIAクラスター核生成が終了した段階)で応力を負荷するなど、変則的な照射も計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降も、引き続き照射実験を行うため、加速器の使用料は必ず必要な費用である。また、高純度SiCの調達および試験片加工(外注)も必要に応じて実施する。平成25年度は国際学会(中国・ICFRM16)における発表も予定している。また、微細なSIAクラスターの直接観察を行う場合は、米国・ウィスコンシン大の電子顕微鏡を使用する予定である(昨年も観察を実施している)。
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