2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24770017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 和孝 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), その他 (50527900)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 代替繁殖戦術 / 適応 / 野外観察 / 分子実験 |
Research Abstract |
今年度は3年計画の初年度であり,タンガニイカ湖での野外調査を実施し基礎データを採集した.調査計画に基づき,8月―11月にかけてタンガニイカ湖で野外観察と標本採集を実施した.野外観察は,同湖固有のカワスズメ科ランプロロギニ族の1種ランプロロガス・カリプテルス及び同族のネオランプロロガス・モンダブで行った.いずれも行動観察,標本採集を予定通り実施し,スニーカーの詳細について知ることが出来た. カリプテルスの採集標本は,次の3つの異なる目的のために用いる.1)戦術間の形態変異:CTスキャンによる3次元形態解析を行い,主に頭部骨格の戦術間の差異を精査する.2)戦術間の生活史変異:アルコール保存した30個体から耳石を採集し,輪紋による齢査定を行う.このために必要な耳石の輪紋形成パターンについては,現地で飼育実験を実施しており,そこから調べることができる.3)戦術の遺伝基盤:異なる戦術間で配列を比較するために,アルコール保存した20個体を分子実験のために用いた.いずれの解析も帰国次第開始し,現在も継続しているため,結果が出るのは来年度以降になる. 種間比較のための標本採集は計画通り45種に対して実施し,30種においては十分なサンプルを集めることが出来た.また,基礎的な生態が分かっていない29種においても観察を行い,十分な成果を得ることができたと考えている.これらの調査から新たに6種から代替繁殖戦術(スニーカー)の存在が示唆された.しかし,産卵行動自体の観察例が少なく,今後も調査が必要である.同様に,十分な標本が集まらなかった15種についても,サンプリングを継続する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプリングがうまくいっていない種もあるが,それは想定内の範囲のもので,計画の遅れをもたらすものではない.また,今年度は予定していなかった分子実験についても,十分なサンプルを集めることができたために,予定より早く実施することが出来た.この点においては,予定よりも進んでいると考えている.総合的に判断すると,今年度の調査は順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,今年度のテーマが継続して実施される.すなわち,現地調査と分子実験である. 今年度は予定以上に標本が採集できたために,来年度は解析に多大な時間を要する.これらの研究はいずれも新規性の高いものであり,期待する成果が得られた場合には,速やかにその公表,すなわち論文の作成に移行したい.また,学会での発表も予定している. また,今年度の野外調査において,当初は予定しなかった口内保育種(ランプロロギニ族以外のタンガニイカ湖産カワスズメ科魚類)からも代替繁殖戦術が見つかった.この点では,対象種を増やすという計画の見直しが必要になるかもしれないが,そうすることで新たなブレークスルーがあるのかどうかをよく吟味して決めたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現地での物価の上昇があり,調査のための旅費に多くの研究費を割く必要性が生じた.また,共同研究により幾つかの支出を抑えることが出来た.その結果,当初予定していた品目の配分が変わり,そして差額が生じた.差額は来年度以降の研究費と合わせて,実験に用いる消耗品あるいは試薬の購入に充てたい.
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