2012 Fiscal Year Research-status Report
ツチガエルのゲノムサイズに見られる種内多型の進化史に関する研究
Project/Area Number |
24770073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
島田 知彦 愛知教育大学, 教育学部, 助教 (30610638)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲノムサイズ / 地理的変異 / ツチガエル |
Research Abstract |
平成24年度は、ツチガエルの日本国内の個体群間に見られるゲノムサイズの変異の全貌をつかむために、国内30地点から採集した196個体のサンプルを用いて解析を行った。その結果、予備実験で示されたのと同様、ツチガエルの種内に知られている6つの遺伝的系統のうち、関東地方に分布する系統のゲノムサイズが他より大きいことが明らかとなった。一方で、申請時の予備実験の段階では、ゲノムサイズの大きい関東型と小さい西日本型の交雑に由来する系統(XY型、ZW型、neoZW型)において親系統の中間的なゲノムサイズを呈することが示唆されていたが、地点と個体数を増やした結果、そのような傾向は見られなくなり、これらのゲノムサイズは西日本型と変わらないことがわかった。その反面、予備実験では解析していなかった佐渡島に固有な系統では関東型と同様に大きなゲノムサイズが得られるなど、新たな結果も得られた。こうしたゲノムサイズの地理的変異は、両生類では少数の例しか知られていないだけでなく、ツチガエルの場合には、過去にいったん分化した系統群同士の交雑を含む複雑な進化史をたどったことが知られているため、そうした進化史の中でゲノムサイズの変異がどのように形成されたかを議論することができる。 ツチガエルの活動期間が終了した秋以降には、平成25年度以降の交配実験を円滑に進めることができるように飼育設備の拡充と、予備実験を行った。また、DNA実験ができる環境を整え、核ゲノムにおいて個体群間の変異が検出できる領域を探索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の予備実験では地点数や個体数が限られていたため、研究を本格的に開始した結果、一部で申請時に想定していたのとは異なる傾向が得られたが、佐渡島に固有な系統の挙動など、新たな興味深い傾向も得られた。このため、全体としては予定通りの成果が上がっていると考えている。 平成24年度のツチガエルの活動期間に得られたサンプルで、国内のゲノムサイズの変異はおおむね把握できたが、議論の鍵となる佐渡島固有の系統の個体数が十分でなかったことや、次年度に韓国産の近縁種が入手できることが明らかになったことなどから、上記の結果は予定通り平成25年度にそれらのサンプルを加えた後に論文化することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度に得られた結果に、いくつかの重要な産地のサンプル(佐渡島、韓国など)を加え、できるだけ早い段階での論文化を目指す。また、予定通りゲノムサイズの大きく異なる系統同士の交雑実験で起こるゲノムサイズの挙動の変化を確認する。当初の予定では、ゲノムサイズが最も異なる関東型と西日本型の間で実験を行う予定であったが、平成24年度の結果を受け、分布を接していながらゲノムサイズが大きく異なる関東型とXY型(東海地方を中心に分布)との間の実験を行うことにした。この交配実験に加え、両者の分布境界でより密なサンプリングを行い、ゲノムサイズの変異を詳しく解析し、ミトコンドリアDNAや核DNAの結果と合わせることで、ゲノムサイズの異なる系統同士が側所的に分布している場での遺伝的交流の実態と、そこでみられるゲノムサイズの挙動を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、遠隔地のサンプリングを研究協力者に依頼する機会が多かった。また自身で行った採集においても、当初の予定より効率的に採集できたこともあり、予定より旅費の支出が少なくなった。一方で、次年度に必要な交雑実験用の飼育設備や、DNA解析機器を年度末に整備したため、物品費が多くなる結果となった。このように当初とは若干異なる予算配分になったことを受け、全体的にも若干の残予算が生じた。 一方、平成25年度には物品費は当初の予定より少なくなるが、その代わりにゲノムサイズの異なる系統同士の境界領域で詳細なサンプリングを行うために、旅費が多く計上される予定であり、研究計画全体としては当初の見込みに近い予算配分になる予定である。
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Research Products
(2 results)