2012 Fiscal Year Research-status Report
神経接合部の階層縦断的運動計測による情報伝達機構の解明
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24770147
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
関口 博史 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (00401563)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 1分子計測 / ナノ結晶 / ダイナミクス計測 / 膜タンパク質 |
Research Abstract |
生体システムの情報伝達では様々な分子および分子群がきわめて動的に機能していると想像されるが、それらの情報取得が困難であるため、そのメカニズムについての知見は充分ではない。本研究課題では、情報伝達に関わる受容体・膜タンパク質についての1分子内ダイナミクスとそれらのクラスタリング過程といった並進的なダイナミクスを、時間スケール縦断的(数100ナノ秒から数秒)に計測する実験手法を開拓する。 今年度は神経伝達に重要な役割を担っているアセチルコリン受容体(nAChR)やアセチルコリン結合タンパク質(AChBP)をサンプル対象として時間スケール縦断的なダイナミクス計測に取り組んだ。フレーム速度を10μs/f ~36ms/f と変えてX線1分子計測を行ったところ、100μs/f において、アゴニスト受容に伴って結合サイトのねじれ運動と傾き運動の2つの回転軸の運動が活性化されること、またアンタゴニストが作用することでこれらの運動が不活性化されることがわかった。 また、X線1分子追跡法のプローブである金ナノ結晶の可溶化および機能化に取り組み、PEGコーティングあるいは抗体修飾する等の化学修飾を行うことで可溶化を実現した。界面活性剤なしに金ナノ結晶を可溶化することは脂質膜上で機能する膜タンパク質のダイナミクスを計測する点において有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間スケール縦断的な測定が行えたため。ただし、蛍光観察とX線1分子追跡法の同時観察を実現するためのプローブ開発の実現に至っていないので対策が必要。
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Strategy for Future Research Activity |
可視光・X線1分子追跡プローブを開発する。蛍光特性と結晶性に優れた量子ドットを利用を試み、量子ドットの結晶特性がX線1分子追跡法を行うのに充分であれば、そのまま利用する。市販されている量子ドットについてX線1分子追跡法で利用可能か網羅的に調べ、最適な量子ドットを選定する。最適な量子ドットが見つからない場合は、既にX線1分子追跡で実績のある金ナノ結晶を蛍光標識、あるいは量子ドット標識させたプローブの作製を試みる。また、現状では高分解能の蛍光観察とX線1分子追跡法の同時観察は困難であることがわかったが、同時観察を実現するための指針を得たい。 また、X線1分子追跡法のデータ解析手法についてはある程度の自動化は進んではいるが、解析手法を習得するまでの労力は小さくない。より簡便に解析が行えるように整備したい。 なお、本研究課題は大型放射光施設・SPring-8にて測定を行うことを前提としている。ビームタイム日程調整の影響で2012年度後半にビームタイムの割り振りがなかったこと、また、2013年4月および5月にビームタイム日程が集中することが知らされていたので、2012年度に助成いただいた研究費を2013年度に繰越した。繰越した研究費はサンプル調製用の試薬購入に使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
可視光・X線1分子追跡プローブとして、蛍光特性と結晶性に優れた量子ドットの利用を試みる。量子ドットの結晶特性がX線1分子追跡法を行うのに充分であればそのまま利用し、充分でなければ、既にX線1分子追跡で実績のある金ナノ結晶を蛍光標識、あるいは量子ドット標識させたプローブの作製を試みる。
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