2013 Fiscal Year Research-status Report
立体構造に基づくナトリウムチャネルβサブユニットの生理的・病理的機能の解析
Project/Area Number |
24770195
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
清水 英明 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (10360562)
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Keywords | 電位依存性ナトリウムチャネル / βサブユニット / 細胞接着 / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
電位依存性ナトリウムチャネルβサブユニットはチャネル機能調節、細胞接着を担う多機能タンパクである。申請者はX線結晶構造解析によって、βサブユニットがN末側βストランドの交差によって結合するstrand-exchanged dimerを形成すること、さらにそのstrand-exchanged dimerが互い違いに結合して平面的に配置する zipper-like構造を形成することを明らかにした。本研究ではβサブユニットのユニークな立体構造と細胞接着機能との関連、およびチャネル調節機能への影響を明らかにすることを目的とする。 本年度は、まずstrand-exchanged dimer形成と細胞接着機能との関連を調べるために、βサブユニット変異体の解析を行った。strand-exchanged dimerの会合部位に変異を導入したβサブユニット変異体14種類のCHO安定発現株を樹立し、細胞表面への発現、ダイマー形成、細胞接着活性を調べた。その結果、strand-exchanged dimer形成(cis-homophilic interaction)は細胞接着活性(trans-homophilic interaction)を促進すること、その際には細胞上のstrand-exchanged dimer立体構造を極めて正確に認識していることが示唆された。また、α・βサブユニット共発現細胞による免疫沈降実験の結果から、strand-exchanged dimer 形成とα-β複合体形成は競合的な関係にあることが示された。またゲル濾過実験から、βサブユニットのダイマー形成は極めて遅いことが示された。以上の結果から、βサブユニットはモノマー・ダイマーの平衡状態にあり、モノマー状態はα-β複合体形成(チャネル機能調節)を、ダイマー状態は細胞接着をそれぞれ誘導するというモデルを提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
βサブユニット変異体の解析により、strand-exchanged dimerと細胞接着活性との関連が具体的に明らかになった。またα・βサブユニット共発現細胞による免疫沈降実験により、α-β複合体形成に関する新たな知見を得ることできた。おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
βサブユニットの変異体解析において、ダイマー形成は促進するが細胞接着は抑制するユニークな変異体を見出した。今年度はこの変異体を用いた機能解析(α-β複合体解析、接着活性、クロスリンク実験)、X線結晶構造解析および誌上発表を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ダイマー形成促進と細胞接着抑制を示すユニークな変異体を見出した。この変異体の構造解析・機能解析によって研究遂行上重要な知見が得られる可能性が高く、平成25年度はその基盤となる解析を優先した。そのため当初の計画を変更し、平成26年度は変異体の結晶構造解析、機能解析(α・β複合体解析、接着活性、クロスリンク実験)および外部発表を行い、未使用額はその経費に充てることとしたい。 平成25年度に実施予定だった変異体構造・機能解析に関連した試薬類購入分の未使用額が生じた。平成26年度の使用用途は以下のとおりである。 タンパク発現・精製試薬(140千円)、カラム類(120千円)、結晶化試薬、解析(150千円)、ウエスタン関連試薬(150千円)、標識試薬抗体等(160千円)、細胞培養関連試薬、培地(120千円)、旅費(250千円)、人件費その他(100千円)。
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