2012 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類の成体真皮再生をめざしたマウス胚創傷治癒メカニズムの解明
Project/Area Number |
24770200
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川住 愛子 東北大学, 生命科学研究科, 研究支援者 (80625484)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 真皮再生 / 瘢痕 / マウス胚 / マイクロサージャリー |
Research Abstract |
本研究では、Xenopusの創傷治癒メカニズムを参考にしながらマウス13.5日胚の皮膚における創傷治癒メカニズムを分子・細胞レベルで明らかにすることを目的とし、実際にはマウス13.5日胚の皮膚に母体内微小手術(exo utero マイクロサージャリー)によって人為的に創傷を形成させる手法を用いて、マウス胚の創傷治癒過程で起こるイベントを以下の項目について解析した。 1.Xenopus創傷治癒において真皮再生細胞特異的に発現するPrx1について、マウス13.5日胚 創傷治癒過程の真皮再生細胞でも発現が見られるか、さらには種間で保存されている四肢エンハンサーの活性化があるかどうかを確認する。 2.マウス13.5日胚の創傷治癒過程で見られる真皮再生細胞の由来・性質を明らかにする。 <研究成果1> マウス13.5日胚 創傷部位におけるPrx1 mRNA発現を確認した。一方で、Prx1四肢エンハンサー活性は創傷部位では見られなかった。続いて、瘢痕が出来るとされている発生ステージである14.5日胚, 15.5日胚, 16.5日胚、ならびに新生仔, 成体の皮膚創傷部位におけるPrx1 mRNA発現を確認したところ、当初予想していた結果とは異なり14.5日胚, 15.5日胚でもPrx1 mRNA発現が確認された(16.5日胚, 新生仔, 成体については未確認)。 <研究成果2> マウス13.5~15.5日胚 創傷部位におけるPrx1 mRNA発現陽性細胞がどの組織由来の細胞であるかについて調べるため、組織特異的マーカーの免疫染色を行った。その結果、真皮細胞が当該の細胞であることが明らかになった。Xenopus 創傷治癒においては創傷部位周囲の筋組織が分解した後に生ずる単核の細胞がPrx1 mRNAを発現することが知られているが、今回のマウスの結果はそれとは一致しないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
創傷治癒部位におけるPrx1 四肢エンハンサーの活性化が見られなかったため、当初予定していたエンハンサー解析による上流シグナルの同定ならびにPrx1 四肢エンハンサーを用いた遺伝子強制発現系の構築が不可能となった。そのため代替案として、創傷治癒部位特異的に発現する他の遺伝子の探索を行っている。また、エンハンサー解析以外の方法による上流シグナル探索も行っており、現在は文献で報告のあったFAKシグナルについて検討中である。 マウス胚の創傷治癒時の瘢痕形成について、文献などによれば13.5日胚では瘢痕の形成が見られず14.5日以降の胚では瘢痕の形成が見られると報告されていた。しかし詳細に調べたところ、マウス胚における皮膚瘢痕の定義が文献によって異なっており、自らその定義を作り出す必要が生まれた。 研究計画立案時には想定していなかった以上の事態に対応するために代替案を実施しているため、当初の計画よりもやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス胚の瘢痕形成は14.5日以降の胚で見られると文献により報告されているが、このような報告における瘢痕形成のタイミングと今回得られたPrx1 mRNA発現のタイミングとの間には相関がないように見える。しかし実は、マウス胚の瘢痕形成がいつ始まるかについての記述は文献によって大きく異なり、それはマウス胚における瘢痕の定義があいまいであることによると考えられた。そこでまずマウス胚における瘢痕の定義を作り、瘢痕形成の有無と遺伝子発現の変化について両者が相関して変化するものを明らかにする。具体的には、形態的な側面と分子的な側面の両方から瘢痕の定義をする。前者についてはマウス胚皮膚表面や切片を走査電顕を用いて観察する。後者については、成体の瘢痕では真皮におけるCollagenサブタイプが正常皮膚と変化することが報告されているので(特にIII型の減少とI型の増加)、胚についても様々なサブタイプのCollagenを免疫染色によって確認する。以上の方法で瘢痕の有無が切り替わるポイントを特定し、その前後で変化する遺伝子発現をマイクロアレイ解析により特定する。 以上で同定された因子が創傷治癒時の真皮再生細胞で生理的な役割を果たしているのかを確認するため、創傷治癒時の真皮細胞特異的にloss-of-function解析(ドミナントネガティブ型因子を過剰発現)、また創傷前の真皮細胞特異的にgain-of-function解析(当該の因子またはその修飾酵素などの活性を制御する因子を過剰発現)を行い、Prx1 mRNA発現や細胞の未分化性・増殖能・郵送性を確認する。この過剰発現解析のためには真皮細胞特異的に発現を誘導するエンハンサーにCreをつないだTgマウスと全身に当該の因子を発現させるTgマウスが必要であるので、これらの作製についても平成25年度に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・マウス胚の解析のための妊娠マウス購入費 ・走査電顕による観察のため、東北大学共同利用施設の走査電顕の使用料 ・マウス胚 瘢痕の定義を行う目的で様々なサブタイプのCollagenの免疫染色を行うための抗体購入費 ・マイクロアレイ解析の外注費 ・Tgマウス作製のための遺伝子改変用試薬費、マウス購入費、マウス飼育費
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