2013 Fiscal Year Research-status Report
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24770234
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
郡山 尚紀 酪農学園大学, 獣医学群, 講師 (50416278)
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Keywords | チンパンジー / 人獣共通感染症 / 糞中IgA / EBウイルス / サイトメガロウイルス / パラインフルエンザウイルス / 百日咳 |
Research Abstract |
本研究では、タンザニアマハレ山塊国立公園において、観光客・レンジャー・研究者からの人由来感染症が類人猿のチンパンジーに感染しているか明らかにすることを目的としている。当該年度は、タンザニアでのフィールドワークは行わず、初度末に現地で採材したサンプルの分析を行った。現地で採取した糞からIgAを抽出し、ELISA法で22頭中9頭の糞からIgAの存在を確認できた。次に、本研究の当初の目的であるヘルペスウイルス科の主要なウイルスである、単純ヘルペスウイルス(HSV 1&2)、EBウイルス(EBV)、帯状疱疹水痘ウイルス(VZV)、サイトメガロウイルス(CMV)について抗体の保有率をELISA法をもちいてスクリーニングした。その結果、ヘルペスウイルス科においてはEBVとCMVにおいて抗体の上昇が確認されたが、HSV 1&2およびVZVについて抗体は検出されなかった。また、ヘルペスウイルス科以外の病原体にも百日咳菌(B. pertussis)およびパラインフルエンザウイルス1,2,3(PIV1,2,3)において調べた結果、それぞれにおいて抗体が検出された。B. pertussisにおいては5頭において陽性を示し、そのうち1頭の抗体価は高い値であった。PIV1,2,3においては8頭で陽性を示し、7頭において高い値を示した。つまり、タンザニアマハレ山塊国立公園に生息している野生チンパンジーにはその種特異的と思われるEBウイルスおよびCMVの感染が認められたのと同時に、人由来感染症であるB. pertussisおよびPIV1,2,3に感染している可能性が示唆された。 これらの結果から、タンザニアマハレ山塊国立公園においてはこれまで報告されたヒトメタニューモウイルスだけでなく他の人獣共通感染症が野生チンパンジーに感染して病気を引き起こす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、野生のチンパンジーに最小限の影響で回収できるサンプルである糞を用いた疾病のスクリーニングの有効性を示すことを念頭に置いた。まず昨年度タンザニアのマハレ山塊国立公園において採取した野生チンパンジーの糞サンプルからIgAの抽出を行い、IgAも保存されていることが確認できた。次のステップとして、その抗体が認識する病原体を調べた。野生チンパンジーにおいても通常より感染している可能性の高いヘルペスウイルス科のウイルスとともに、人においてのみ感染が知られているウイルスについてスクリーニングを行った。それら5種類のウイルス(EBウイルス、サイトメガロウイルス、帯状疱疹水痘ウイルス、単純ヘルペスウイルス1&2)について分析を行い貴重なデータを得ることが出来た。また、これら以外の人由来感染症であるB. pertussisおよびPIV1,2,3に感染している可能性を示すことが出来たため、当初の目標としていた成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、調べる人由来感染症の項目を増やし、どういった病原体が野生チンパンジーに感染しており、脅威となっているのかについてより多くの情報を得ることに努める。 さらに、再度タンザニアマハレ山塊国立公園において調査を行い、サンプリングを行う。この調査において得られたサンプルは今回測定したものと比較され、抗体価の上昇や減少を評価する。 ところで、糞中にはIgAのみならずIgGも分泌されているため、その抗体も検出する価値があると判断された。ゆえに、今回行った実験の結果をもとに、IgGについても今後解析し、IgAが認識する病原体とIgGが認識する抗体での差についても確認していきたい。 また、昨年度調査地で抽出したDNAやRNAからの病原体遺伝子の同定も行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度、海外調査を行わずにサンプルの分析を行ったが、最終年度においては再渡航してサンプル回収および分析を行う必要がある。つまり、最も経費のかかる渡航を次年度に行うための予算を確保したため次年度使用額が生じた。 タンザニアへの渡航費、タンザニアでの調査費、抗体価測定のためのキットの購入、論文投稿のための英文校閲費並びに費用に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)