2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外分子シャペロンの新たな機能と病原細菌のバイオフィルム形成機構
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24780079
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
杉本 真也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60464393)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 阻害剤 / 分子シャペロン / DnaK / Myricetin / persister / アミロイド線維 / curli |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、分子シャペロンであるDnaKが菌体外アミロイド線維curliに依存した大腸菌のバイオフィルム形成に重要であることを見出している。さらに、天然フラボノールの一種であるMyricetin (Myr) を用いることでcurli依存的な大腸菌のバイオフィルム形成を濃度依存的に抑制できることを報告している。本研究では、大腸菌をモデルとして、Myrおよびその類縁体を用いて、バイオフィルム形成と薬剤寛容性(トレランス)を示す休眠状態の菌(persister)を抑制できるかを検討した。Myr及びその類縁体8種類を選択し、大腸菌K-12株のバイオフィルム形成に与える影響を調べた。その結果、Myrの類縁体No. 4(MD4: Myricetin Derivative No. 4)がMyrを加えた場合より効果的にバイオフィルムの形成を抑制できることを見出した。MD4の50%バイオフィルム阻害濃度(IC50)は5.6 μMであり、Myr(IC50=46.2 μM)よりもおよそ10倍高い活性を示した。透過型電子顕微鏡により細胞外構造体を観察したところ、MD4を添加した場合にcurliの産生が抑制されていることが示された。また、curliの産生に関わるタンパク質の発現を確認したところ、MD4の添加によりcurliの産生に必須なCsgDおよびRpoSの量が減少することを見出した。さらにRT-PCRの結果から、csgD mRNAおよびrpoS mRNAがMD4添加時に減少することが分かった。これらの結果より、MD4はRpoSより上流の制御因子の機能を阻害している可能性が示唆された。次に、トレランスにRpoSが重要であると報告されていることから、MD4を用いることによりpersisterを抑制できるかを検討した。その結果、MD4と抗菌剤との併用により薬剤抵抗性の菌を効率的に殺菌できることが示された。以上より、バイオフィルムを阻害することだけに留まらずpersisterも抑制できることから、MD4は慢性感染症の予防に極めて有効であると考えられる。
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Research Products
(9 results)