2013 Fiscal Year Research-status Report
リシーケンス解析によるラン藻の新規高温耐性遺伝子の探索
Project/Area Number |
24780082
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
兼崎 友 東京農業大学, 応用生物科学部, 研究員 (70380293)
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Keywords | シアノバクテリア / 高温耐性 / 次世代シーケンサー / リシーケンス / ゲノム |
Research Abstract |
シアノバクテリアのゲノムには自然突然変異が起きやすいことは経験的に広く知られている。従来までは、突然変異により環境ストレス耐性を獲得した変異株の原因遺伝子座を迅速に決定することは非常に困難であった。本研究においては、次世代シーケンサーを用いたリシーケンス解析により、多数のシアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942 研究室株の完全なゲノム情報を再整備し、それらの表現型の違いとして知られる高温耐性や遊泳性に関わる原因遺伝子座を解明する。また、新たに高温耐性突然変異株を単離して、それらのリシーケンス解析をおこない、バイオインフォマティクスの手法と分子生物学的手法を駆使して高温耐性に関わる変異遺伝子座を同定する。 昨年度までのリシーケンス解析により決定した、Synechococcus elongatus PCC 7942 Nodai株、Waseda株、Nagoya株、Akita株の株固有の全変異遺伝子座について、サンガー法で確認するとともに、各株の表現型に関わる原因遺伝子座の探索をおこなった。昨年度、細胞の遊泳性に関わる原因遺伝子同定に成功したが、この遺伝子が転写制御因子であったため、その制御下の遺伝子を探索した結果、繊毛構成遺伝子の発現を制御していることが明らかにした。 また未解明であった、研究室株間の高温耐性に関わる遺伝子座についても原因遺伝子座の候補の同定に成功した。高温感受性のNagoya株の該当遺伝子上のSNPをNodai株型に置換することにより、高温での細胞増殖がNodai株に匹敵するレベルまで上昇することが明らかにした。これについて現在さらに検証を進めているが、この遺伝子座が高温耐性に関わることはシアノバクテリアでは新規の知見である。当初はNodai株が突然変異により高温耐性を獲得した株と予想していたが、実際にはNagoya株が高温感受性となる突然変異を生じた株であると分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表現型の異なる研究室株間の比較ゲノム解析により高温耐性に関わる遺伝子座の同定に成功した。また、リシーケンス解析の解析手法について、様々な試行錯誤をおこなった結果、高精度な変異部位解析スキームの確立に成功した。今後、本研究助成期間内にさらなる新規遺伝子座の同定が期待できる状況になってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに新規単離した高温耐性株は全てNagoya株ベースであったため、Nodai株をベースに、Nodai株以上の高温耐性を示す株を取り直す作業を進めている。また、高温感受性である新規基準株から、新たに高温耐性のコロニーを11株、取得することに成功した。現在、これらの高温耐性株のリシーケンス解析を実施中である。変異部位の同定に成功した株でトランスクリプトーム解析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費・旅費は予定通り消化している。人件費、その他の費用について、当初の想定した支出が次年度にずれ込むことになったため、次年度使用額が生じる結果となった。 人件費、その他の経費に関しては、英文校閲費、論文投稿料、機器修理費、外注費用などにより消化する計画である。物品費については前年度に引き続き、シーケンス試薬代に大半を使用する。旅費は学会などへの研究成果報告により消化する。
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Research Products
(5 results)