2012 Fiscal Year Research-status Report
真核生物におけるD型アミノ酸の機能と制御機構の解明
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24780098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 智和 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90584970)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | D-セリン / D-セリンデヒドラーゼ / ピリドキサールリン酸 / D-アミノ酸 |
Research Abstract |
本年度は、現在までに構築した二種類のD-Ser酵素定量法(すなわち試料中D-Serを出芽酵母由来D-セリンデヒドラターゼ(Dsd1p)により特異的にピルビン酸へ変換し、その後、乳酸脱水素酵素(LDH)、もしくはピルビン酸オキシダーゼと共役させることで定量する酵素定量法)の臨床利用を目指し、LDHを用いた酵素定量法の96穴プレートへの適用、およびそのキット化に取り組み、これを完了した。これにより本定量法を用いたヒト尿中D-Serの簡便なスクリーニングが可能となった。なお、本定量法キットは、上市の準備を進行している。さらに、本キットを利用し、少人数の被験者の、尿中D-Serの日内、日間変動の解析を実施した。 また、Dsd1pの構造、機能相関の解明を目指し、Dsd1pの結晶化を試みた。本酵素の結晶析出条件の検討が難航したため、分裂酵母、バクテリア由来オーソログの過剰発現系の構築に取り組み、これを完了した。また、Dsd1pにおけるピリドキサールリン酸のピリジン環窒素に相互作用する残基(Y203)に着目した触媒機構解析を行い、本酵素反応がE2機構によって進行している可能性を示した。 哺乳類におけるD-アスパラギン酸の機能解析の為に、バキュロウイルス-昆虫細胞系、およびピキアを用いたマウス推定アスパラギン酸ラセマーゼ(DR)の発現系を検証した。しかしながら、いずれの場合も目的タンパク質を可溶画分に得ることはできなかった。このため、哺乳類細胞を用いた発現系の構築を検証することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は今年度、(1)D-セリン酵素定量法のキット化と、それを用いた動態解析。(2)Dsd1pの構造、触媒機構の解析。(3)DRの発現系の構築とその性状解析。について実施を予定していた。以下にその達成度を述べる (1):ほぼ予定通りか、それ以上のスピードで、研究が進行した。 (2): Dsd1pの結晶化条件の検討に難航した為、そのターゲットをDsd1pから、そのオーソログへ変更することとした。オーソログの発現系は構築が完了し、その構造解析を引き続き検討する予定である。一方で、Dsd1pの触媒機構の解析は、予想以上の進展がみられた。 (3):DRリコンビナントタンパク質の異種発現系の構築は難航した。哺乳類細胞を用いたリコンビナントタンパクの所得を目指している。 全体の進行状況としては、概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、(1)臨床利用を目指した、血清中D-セリン量の酵素定量法のキット化、(2)細胞性粘菌D-セリン代謝関連酵素の欠損株作製と、そのフェノタイプの検証、およびこれらD-セリン代謝酵素の性状解析の実施を予定している。また、前年度において未達となった、Dsd1pの構造解析、DRリコンビナントタンパク質の発現系の構築、およびその性状解析についても取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の大部分は物品費(消耗品)として使用することを計画している。 D-セリンデヒドラターゼや、細胞性粘菌由来D-セリン代謝酵素の機能解析、単離精製に不可欠な培地などの試薬、カラム等の費用を計上している。また、細胞性粘菌の対象遺伝子欠損株の作成や、そのフェノタイプ解析に不可欠な、ポリメラーゼ、制限酵素等の試薬購入を予定している。また、マウス等の実験動物の維持、管理費、廃棄物等の処理費用を計上している。その他、結晶構造解析やDRリコンビナントタンパク質の発現系構築で共同研究を計画しており、研究打ち合わせの為の旅費を計上している。また、研究成果の発信や、情報収集の為に、D-アミノ酸研究会、酵素補酵素研究会、ビタミン学会、生化学会、農芸化学会への参加を予定しており、これにかかる費用を計上している。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Catalytic mechanism of serine racemase from Dictyostelium discoideum.2013
Author(s)
Ito, T., Maekawa, M., S, Hyashi., Goto, M., Hemmi, H., Yoshimura, T
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Journal Title
Amino Acids
Volume: 44
Pages: 1073-1084
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Metal ion dependency of serine racemase from Dictyostelium discoideum2012
Author(s)
Ito, T., Murase, H., Maekawa, M., Goto, M., Hayashi, S., Saito, H., Maki, M., Hemmi, H., & Yoshimura, T.
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Journal Title
Amino Acids
Volume: 43
Pages: 1567-1576
DOI
Peer Reviewed
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