2012 Fiscal Year Research-status Report
大規模崩壊地からの土砂生産過程の解明と生産量の推定
Project/Area Number |
24780141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
今泉 文寿 静岡大学, 農学部, 准教授 (80378918)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大規模崩壊地 / 土砂生産 / 凍結融解 / 砂泥互層 / レーザー測量 |
Research Abstract |
大規模崩壊地はその形成時に大規模な土砂災害を引き起こすだけでなく,形成後も岩盤の風化作用や拡大崩壊により継続的に土砂を生産し続ける。大規模崩壊地からの土砂生産は河川生態系へ重大な影響を及ぼすばかりでなく,土石流の発生を引き起こし二次的な土砂災害につながる可能性がある。そこで本研究では,大規模崩壊地の発生するリスクが特に高い破砕帯堆積岩地域における崩壊地からの土砂生産過程の解明,および生産量の推定を目指している。 平成24年度は,静岡県に位置する大規模崩壊地「赤崩」および「大谷崩」内の不安定な斜面を対象として春季と秋季の2回にわたり地形の定期測量を行った。そしてそれをもとに地形の変化量の空間分布を調べた。大きな地形変化は,土砂生産が活発であるということを意味する。春季と秋季に測量を行った理由は,大規模崩壊からの土砂生産が,夏季~秋季の降雨によるものか,冬期~春期の凍結融解作用によるものかを明らかにするためである。あわせて土砂生産の誘因となる温度・雨量の観測や,空中写真を用いた大規模崩壊地の長期的な地形変化の解析を開始した。 平成24年度の観測の結果,春季から秋季まで期間の地形変化は明確ではないことがわかった。このことは,冬季の凍結融解による土砂生産が夏季の~秋季の降雨による土砂生産量よりも卓越していることを示唆するものである。これまで大規模崩壊地からの土砂生産についての季節変化を捉えた事例はほとんどなく,本観測結果は高い新規性を有する可能性がある。平成25年度も引き続き観測を行い,そのことを裏付けるためのデータの蓄積を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は当初の計画どおり現地調査を遂行した。具体的には,大規模崩壊地からの土砂生産量を把握するため,静岡県北部,南アルプスの「赤崩」および「大谷崩」内の不安定な斜面を対象として,春季と秋季の2回にわたり地形の定期測量を行った。その結果,土砂生産量の空間分布についての基礎データを得ることができた。あわせて,土砂生産の誘因となる温度・雨量の観測を行った。しかしながら現地調査の結果,一部の測量地点において地形の測量誤差が地形変化量を上回るという場所がみられた。このような地点では地形変化量についての議論を十分に行うことができないため,研究の目標を達成するためには今後,測量方法や測量地点の見直しを行っていく必要がある。 また,大規模崩壊地の長期的な地形変化,土砂生産量の変化を追跡するため,空中写真測量による地形解析を開始した。こちらについても,当初の計画どおり進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も引き続き2つの大規模崩壊地において地形の定期測量を行う。地形の測量には機材,技術を必要とすることから,関係研究者と連携をとりながらすすめていく。そして得られる地形の変化量から土砂生産のタイミング,空間分布を特定する。また,土砂生産の誘因となる温度・雨量の現地観測や,空中写真を用いた大規模崩壊地の長期的な地形変化の解析を継続して行う。平成25年度にはある程度のデータの蓄積を達成できる見込みであり,データを解析することによって得られる知見を逐次学会などで発表していく。平成24年度,一部の測量地点において,地形の測量誤差が地形変化量を上回るという場所がみられた。このような地点では地形変化量についての議論を十分に行うことができないため,測量方法の再検討や測量地点の変更等による対処を行っていきたい。 平成25年度後半からは,大規模崩壊地に対して土砂生産モデルを適用し,得られる土砂生産量の推定結果を,測量によって得られる実際の土砂生産量と対比させ,モデルの適用性について検討する。土砂生産モデルには既往のものを用いるが,既往のモデルは大規模を対象とした検証がほとんどなされていない。そこでモデルの適用に問題が生じた場合は,必要に応じてモデルの改良,開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,代表者の職場の異動があったこともあり,現地調査やデータ整理を行う上での基本的な物品の購入に多くの予算を投じた。このため,現地調査用具・資材が十分にそろっている状態ではないため,平成25年度も引き続き現地調査用具・資材の購入をすすめる。また,代表者および研究協力者が現地調査や研究打ち合わせを行うための旅費も計上する。平成25年度にはデータの本格的な解析を行うため,解析に必要なPCやソフトの購入,データの解析補助を行う学生への謝金の支払いを計画している。 平成24年度から開始した観測により,平成25年度にはある程度の現地調査データの蓄積がみられると考えられる。得られたデータをとりまとめ,国内外の学会,研究会で発表を行う予定である。学会へ参加するための旅費や学会参加費への研究費の使用を計画している。
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[Presentation] LiDAR monitoring of retrogressive processes on the steep rockslope of a large landslide in the Japanese Alps2012
Author(s)
Nishii, R., Imaizumi, F., Murakami, W., Daimaru, H., Miyamae, T., Ogawa, Y.
Organizer
EGU General Assembly 2012
Place of Presentation
Austria Center Vienna (Vienna)
Year and Date
20120422-20120427