2013 Fiscal Year Research-status Report
震災後の宮城県松島湾におけるマガキ養殖場の餌料環境調査と再生への取り組み
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24780179
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西谷 豪 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70450781)
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Keywords | 松島湾 / 二枚貝幼生 / 判別 / 餌 |
Research Abstract |
本研究では,震災により大きな被害を受けた宮城県松島湾におけるマガキ養殖再生への一助となることを目的とし、研究を遂行している。研究期間3年のうち2年目の成果は大きく分けて2つある。 1つ目の成果はマガキ幼生を他種と判別するための技術確立である。浮遊幼生の動態を把握することは極めて重要であるが、松島湾では数十種類の二枚貝が生息しているにも関わらず、それらの二枚貝とマガキとの浮遊幼生は形態が酷似しており、多くは区別されないまま「二枚貝幼生」として計数されているのが現状である。そこで本研究では、二枚貝幼生を対象にした分子生物学的手法(マルチプレックスPCR法)を確立した。これにより、松島湾に出現する主要5種(マガキ含む)を容易かつ客観的に判別することが可能となった。さらにこれを実際の現場サンプルに適用してモニタリングを行ったところ、マガキ幼生の出現を正確に把握した。さらに、遺伝子だけでなく、形態によっても二枚貝幼生をある程度判別可能になるような下敷きを作製した。この下敷きを実際に現場で養殖をされている漁師の方々に配布したところ、大きな好評を得、問い合わせがいくつもあった。このように研究の成果を現場に還元することができた意義は大きい。 2つ目の成果はマガキ幼生が現場でどのような餌生物を捕食しているのかを明らかにしたことである。マガキ幼生は大きさが200ミクロン程度と小さく、解剖して胃の内容物を検鏡することは不可能である。そこで胃のなかに残されている餌生物の遺伝子を解析することによって、餌生物の種特定を試みた。その結果、餌となっているいくつかの微細藻類を種レベルで特定することに成功した。この成果は現場における浮遊幼生の動態を把握するうえで、さらに室内での種苗生産においても大きな意義を持ち、今後は餌生物の株単離を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に記していたマガキの親個体と幼生が捕食している餌生物を徐々に明らかにしている。さらに、目的に記していた現場における有害有毒プランクトンの出現状況については、毎週のように現場の方から送られてきた海水を検鏡し、漁師の方々に報告している。また、申請書には記載していなかったが、二枚貝幼生を区別する技術的手法を確立することができた。これらの成果は2013年秋の日本水産学会東北支部大会にて発表を行い、支部長賞を獲得した。すでにいくつか論文化するためのデータは揃っており、研究全体としておおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後は、マガキ親個体と幼生の餌生物解明を重点的に行うものとする。この内容は学問的に興味深いだけでなく、実際の水産業に大きく貢献すると期待される。作業のなかで困難となるのが胃の内容物からの餌遺伝子の検出だが、この半年の間にその技術(blocking primer法)を確立しつつある。この新しい技術を用いれば、餌生物の解明は飛躍的に促進すると期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に解析する遺伝子サンプルが多くなると予想されたため、余剰金を次年度に繰り越した。 遺伝子サンプルを解析するために使用する。
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Research Products
(2 results)