2013 Fiscal Year Research-status Report
魚の肉質低下に伴うタンパク質分解機構の解明―プロテオミクスと免疫細胞化学的研究―
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24780203
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
吉田 朝美 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 助教 (80589870)
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Keywords | プロテアーゼ / 魚肉軟化 / 免疫電子顕微鏡法 / プロテオーム解析 |
Research Abstract |
本研究では、食品化学的観点から研究の進展が望まれている魚筋肉自己消化機構の解明のために、プロテオミクス技術を用いて冷蔵保存に伴い崩壊する筋細胞構成タンパク質を同定すると共に、筋細胞構成タンパク質分解に関与する内在性プロテアーゼの動態を免疫細胞化学的アプローチ(免疫電子顕微鏡法)により解明することを目指す。 当該年度では、マダイを試料魚とし、一次元及び二次元電気泳動法を用いて冷蔵保存に伴う筋肉構成タンパク質の変化を明らかにしようと試みた。その結果、複数のタンパク質が魚肉の冷蔵保存に伴い崩壊することを見出した。尚、タンパク質の変化と魚肉軟化との関連性も総合的に考察できるよう、冷蔵保存における魚肉の鮮度低下の指標としてK値、及び魚肉の軟化の指標として筋肉の破断荷重も測定した。また、同試料の凍結切片を作製し、光学顕微鏡法による観察も行っている。 また、免疫電子顕微鏡法に用いるための魚類特有プロテアーゼに対する特異抗体の作製を行った。まず、魚類特有の筋原線維結合型セリンプロテアーゼ(MBSP)のヒスチジンタグ融合タンパク質発現実験を試みたが、発現タンパク質が封入体を形成し、特異抗体を作製するために充分なMBSPタンパク質量を得るまでには至らなかった。そこで、MBSP全アミノ酸配列より立体構造を予想するとともに、エピトープとなり得る領域を探索し、その領域に対する抗ペプチド抗体の作製を行った。また、可溶性セリンプロテアーゼ(G1)については、前年度の研究によりヒトhyaluronan-binding protein 2(HABP2)と近縁なタンパク質であることが明らかとなったため、市販の抗ヒトHABP2抗体を免疫染色法に用いることとした。次年度の初めには、各々の特異抗体の魚類由来各タンパク質への反応性を確認し、免疫染色法を用いた形態学的観察を開始できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
魚類特有プロテアーゼに対する特異抗体の作製、冷蔵保存に伴うタンパク質の変化を二次元電気泳動法及び光学顕微鏡法で検出するなど、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、MALDI-TOF MS法を用いて冷蔵保存中の魚肉軟化に伴い崩壊した筋肉構成タンパク質の同定を行うと共に、作製した抗プロテアーゼ特異抗体の試料魚に対する免疫交叉性の検討、免疫電子顕微鏡法による各プロテアーゼの筋細胞内局在の観察を行う予定である。これらの結果を総合して考察し、魚筋肉自己消化機構の一端を明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度の研究費は適正に使用したが、若干の余剰分が次年度に繰り越された。 次年度の研究費については、概ね請求どおりに使用予定である。
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Research Products
(1 results)