2013 Fiscal Year Research-status Report
食品企業のグローバルな立地選択行動と投資目的に関する分析
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24780213
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
齋藤 久光 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30540984)
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Keywords | 実証分析 |
Research Abstract |
平成25年度は,前年度に得られた理論分析の結果について,日系食品企業の個票データと国際機関の国別データをもとに実証分析を行った. 前年度の理論分析の結果,生産性の高い企業ほど,原料となる農産物の価格が高いなど,企業活動を行うには条件が不利と考えられるような市場でも立地する傾向にあることが明らかとなった.そこで,日系食品企業が実際にどのような国に立地しているのか,計量分析を行った.具体的には,海外に現地法人を持つ日本企業の生産性と,進出先国の市場環境を表す変数(農産物価格,市場規模(GDP),賃金率など)の関係を統計的に分析した. その結果,生産性の高い企業ほど,農産物価格が高い国でも,現地法人を持つ可能性が高いことが示された.言い換えると,農産物価格が高く,直接投資の誘致には不利な条件の国でも,生産性の高い日系食品企業を対象に誘致活動を行えば,事業所を誘致できる可能性があることが示唆された. 以上の結果から,直接投資を増やすためには,既存研究でも言及されているように,農業の生産性向上や関税削減による輸入農産物の価格低減などが政策として有効であることがわかる.さらに本研究では,企業間の生産性の違いを新たに考慮に入れることで,こうした誘致政策を過度に行うと,やがては生産性が低く,現地経済への波及効果も小さい企業の誘致につながり,したがって,誘致政策の費用対効果も低減するという,新たな知見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,前年度の理論分析で得られた主要な結果について,統計データをもとに実証分析を行った.その結果は,おおむね理論分析の結果を支持するものであった.したがって,食品企業の生産性は,直接投資の立地選択において重要な役割を持つことが理論的・実証的に示された.さらには,その結果をもとに,既存研究とは異なる新たな政策的含意を導くことができた. 以上の成果は,研究計画において期待されていたものであることから,現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,研究実施計画に沿って研究を続ける.これまでの研究で,日系食品企業のグローバルな立地選択行動について,理論的・実証的に明らかにすることができた.平成26年度は,こうした食品企業の海外立地が,投資受入国の現地経済にどのような影響を及ぼしているのかを,進出企業の生産性の違いを考慮しながら分析する. 以上の結果をもとに,日系食品企業がグローバル・フードシステムにおいて果たす役割について考察する.
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