2012 Fiscal Year Research-status Report
高温環境下における植物群落内の局所的な熱動態の計測手法の開発
Project/Area Number |
24780246
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
Principal Investigator |
丸山 篤志 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター・生産環境研究領域, 主任研究員 (90355652)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 該当なし |
Research Abstract |
作物群落内の熱環境は、伸長、展葉、開花、登熟など作物の全ての生育過程に強い影響を与え、極端な高温はこれら生育を阻害する。しかしながら、群落内における熱輸送量(フラックス)は群落上のフラックスと異なり直接的な計測手法が存在せず、群落内の熱動態には不明な点が多い。そこで本研究では、粘性流体内の物質動態解析に用いられるSurfaceRenewal解析を植物群落に適用することで、作物体周辺の熱フラックスの詳細な分布を得る新たな手法を開発する。本年度は、群落構造の異なる各種作物を対象に同解析による群落内の熱輸送量の計測の可能性について検討することを目的とした。 九州沖縄農業研究センター(熊本県合志市)および佐賀平野(佐賀県佐賀市)の圃場に設けたフラックス長期観測サイトを利用し、群落構造の異なるイネ・トウモロコシ・ダイズの3種類の作物について、Surface Renewal解析によるフラックスの計測を試みた。各作物の開花期~成熟期(トウモロコシでは開花期~黄熟期)に、群落内の複数高度(6~8 高度)の気温を10Hzで連続測定した。気温の計測には線径0.76mm極細熱電対を用い、全ての計測値はデータロガーに記録した。 イネの10Hzの測定データから、構造関数を用いて温度の変化パターンを解析し、各高度での渦の発達にともなう温度上昇(安定時は下降)の周期と振幅を求めた。次に、得られた周期と振幅から空気塊の温度上昇(または下降)量を求めて群落内各層における顕熱フラックス密度を算出した。得られた顕熱フラックス密度の絶対値は測定高度によって異なり、安定時・不安定時ともに群落下層で小さかった。また、群落下層ほど傾斜パターンの振幅が小さく、一方で周期は長い傾向を示していた。この結果から、熱輸送に寄与する空気塊はその一部のみが最下層まで達していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
群落構造の異なる3種類の作物(イネ、ダイズ、トウモロコシ)について、熱輸送量の解析に必要な群落内気温の変化パターンの詳細な高度分布を得ることができた。同時に、葉温の詳細な高度分布を得ることができたことから、次年度以降の解析(熱輸送量の推定値の妥当性検証)を効率的に進めることが可能となった。当初は2年間で実施することを予定していた解析を今年度中に達成し、イネを対象とした初期解析の結果を学会報告できたことから、本研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、今年度得られた群落内の顕熱フラックス密度の初期解析結果を、群落上での顕熱フラックスと比較することで、解析結果の妥当性を検証する。気温の変化パターンについて2~3種類の複数の構造関数の適用を試み、さらに用いるデータのサンプリング周期を調整することで、より安定的な群落内の熱フラックス密度の計測手法を検討する。平成26年度以降は、開発した手法を用いて、圃場の各種高温対策によって、作物群落内の熱の動態がどのように変化するのか明らかにする。また、群落内の熱輸送量の鉛直分布を簡便に連続測定するための計器のプロトタイプ開発を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
作物圃場での熱動態および関連要因の追加観測に、ケーブル類、パイプ資材、熱電対センサ等の消耗品を使用する。また、定期的な調査や国内外での情報発信のための学会報告、当該手法の研究者との打ち合わせ・情報交換のために旅費を使用する。観測データの整理や作物試料分析等の研究補助に人件費・謝金を使用する。また、得られた研究成果を速やかに公表するため、講演登録や英文論文校閲、投稿料に謝金・その他を使用する。なお、次年度使用額1,483円は研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費と併せて研究計画遂行のために使用する。
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