2013 Fiscal Year Research-status Report
高温環境下における植物群落内の局所的な熱動態の計測手法の開発
Project/Area Number |
24780246
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
丸山 篤志 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター情報利用研究領域, 主任研究員 (90355652)
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Keywords | 熱環境 / フラックス計測 / 作物群落 |
Research Abstract |
作物の生育に大きな影響を及ぼす群落内の熱環境について、昨年度に引き続き群落構造の異なるイネ・ダイズ・トウモロコシの3種類の作物について、群落内気温の測定値から熱輸送量(フラックス)を見積もることができないか、Surface Renewal解析による計測を行った。 佐賀平野(佐賀県佐賀市)の水田および九州沖縄農業研究センター(熊本県合志市)の畑地で熱電対センサを用いて取得された、イネ・ダイズ・トウモロコシの開花期~成熟期の温度データ(10Hz)に対して、構造関数を用いた温度変化パターンの解析を行った。今年度は、構造関数を決めるための温度変化の幾何学的パターンについて、昨年度に用いた単純な温度上昇・急低下の繰り返しのパターン(以下、パターンIとする)に加えて、温度上昇・急低下をしたのちに一定時間を置いてから再び温度が上昇するパターン(パターンIIとする)の場合について解析を行った。解析は、群落内の異なる6~8高度について行った。 昨年度のパターンIの解析では、群落下層ほど温度上昇の振幅(上昇量)が小さく周期は長い傾向が見られたが、今年度のパターンIIの解析から、周期(パターン継続時間)のうち温度上昇している時間(dとする)と急低下後に温度が一定の時間(sとする)を別々に評価することができた。その結果、群落各高度におけるdの値には明確な違いがみられなかった一方で、sの値は群落下層ほど大きい傾向がみられた。すなわち、パターンIにおける群落下層ほど温度変化パターンの周期が長い主な要因は、温度が低下したのちに再び上昇するまでの時間が長いためであることが明らかになった。この結果から、熱輸送に寄与する空気塊は、その一部のみが最下層まで達するが、その後の空気塊の排出までの時間は群落上昇とあまり変わらず、次に空気塊が侵入するまでの時間が群落下層では長いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの時点で、群落構造の異なる3種類の作物(イネ・ダイズ・トウモロコシ)について、熱輸送量の解析に必要な群落各高度の温度変化パターンを明らかにすることができた。今年度は変化パターンを追加した解析により、作物群落内における空気塊の侵入・排出など熱動態の特性を明らかにすることができた。当初2年間で実施することを予定していた解析を達成できたことから、課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、群落内の熱輸送量の鉛直分布を簡便に連続測定するための計器のプロトタイプ開発を進める。そのため、群落内気温の時間変化を圃場で簡便に測定できるよう、複数の熱電対センサを取り付けた計測用ポールを試作する。同時に、センサが簡単に交換可能な計測器となるような工夫を施す。また、最終年度(平成27年度)に向けて、本手法で得られる熱輸送量の精度検証ととりまとめを進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額53,519円は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。 次年度使用額は、次年度に請求する研究費と合わせて、研究計画遂行のために使用する。
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