2012 Fiscal Year Research-status Report
11β―HSD阻害剤による犬下垂体ACTH産生腺腫を標的とした治療に関する研究
Project/Area Number |
24780315
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
手嶋 隆洋 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (80610708)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 下垂体 / 11β-HSD / ACTH |
Research Abstract |
当該研究は11β-hydroxysteroid dehydrogenase (11β-HSD)阻害剤による犬下垂体ACTH産生腺腫を標的とした治療に関する研究である。本研究を遂行するにあたり、研究計画として3項目を掲げた。その1つである犬下垂体における11β-HSD isoformタンパク発現レベルの解明において必要となる犬組織に対する適切な11β-HSD抗体の選定は、他種動物のアミノ酸配列との相同性との比較等から適切な抗体の選定は終了し、犬での特異性についても確認済みである。11β-HSD isoformタンパク発現についての検討として、犬下垂体ACTH産生腺腫によるクッシング症候群に対する治療薬であるトリロスタンを連日投与したモデル犬を作製し、健常犬との11β-HSD isoformの発現の違いについて検討した。この研究内容に関しては現在、海外論文誌に投稿している。 また、研究計画項目の1つである11β-HSD阻害剤が健常な犬の生体に与える影響の検討においては、用量を低・中・高用量と変化させ、短期間の投与の結果、どのような影響が発現するかについて検討した。内分泌学的検査の結果から、用量依存的に11β-HSD isoformに与える影響が変化することが示唆された。また、健常犬において下垂体からのACTH分泌が抑制される用量についても確認できた。本研究内容は、次年度の研究内容を加えて海外論文誌に投稿予定である。 平成24年度の研究内容・実績としては概ね当初の計画通り進行しており、次年度は本年度の結果を踏まえてさらに遂行する予定である。研究内容としては、ACTH分泌の阻害が見込まれる用量を中長期的に投与した結果、犬生体にどのような影響がみられるかについて多面的な方向から検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常犬に対して11β-HSD阻害薬を投与した結果、用量依存的に11β-HSD isoformに対する影響が変化することが示唆された。その理由として、低・中・高用量を短期的に投与した際の副腎からのコルチゾールおよびコルチゾン濃度を測定した結果、用量の違いによりホルモン濃度にも変化が認められた。また、下垂体からのACTH分泌に関しても、用量の違いにより分泌量の変化が認められた。この短期的な結果から、下垂体のACTH分泌を抑制する用量が概ね検討できた。そのため、本年度に実施予定である犬生体に対して中長期的に投与した結果、どのような影響がみられるかについて検討するためのバックグラウンドは整備されたと考えている。 また、実際に犬副腎組織を用いた11β-HSD isoformに関するタンパク発現については、副腎皮質機能抑制モデル犬を作製し検討した。この結果から、犬副腎組織においては11β-HSD isoformの発現が他種動物と異なることが示唆されたため、今後の下垂体組織を用いた検討においても、この結果を考慮して行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの実験結果を踏まえて、次の項目について研究を行う予定である。 ①健常犬に対して中長期的に11β-HSD阻害剤を投与した際の影響 中長期的な投与期間を設定し、投与期間中も含めてどのような変化が発現するかを検討する。検討項目としては、視床下部-下垂体-副腎軸におけるホルモン濃度を中心に投与期間中継時的にモニターする。投与期間終了後は各臓器を採材し、11β-HSD isoformのmRNAおよびタンパク発現量の解析、および病理組織学的な検査を行う予定である。 ②11β-HSD阻害剤が犬下垂体培養細胞に与える影響 犬下垂体培養細胞に11β-HSD阻害剤を添加することで、どのような変化が発現するかを検討する。検討項目としては、生存細胞数の変化、アポトーシスの有無、11β-HSDやACTHの前駆物質であるPOMCの発現量、およびACTH分泌量の変化についての検討を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
健常犬に対する11β-HSD阻害剤の中長期的投与における影響を検討するために、実験動物、11β-HSD阻害剤、タンパク発現解析試薬、mRNA発現解析試薬、病理組織学的検査試薬等の購入に研究費を用いる予定である。また、犬下垂体培養細胞に対する影響を検討するために、細胞培養関連試薬等の購入を予定している。これらの試薬等は本年度から継続して使用可能なものもあるが、次年度も新たに購入が必要であるため、適切な研究計画を設定し購入する予定である。また、次年度は11β-HSD阻害剤を投与した犬生体の病理組織学的検査および培養細胞等の検討を予定している。これらの研究内容には画像解析も必要となるため、画像解析の使用に用いるコンピューターおよび画像解析ソフトの購入を検討している。 本年度も本研究内容の一部を海外論文誌へ投稿するにあたり英文校閲の費用を研究費より支出した。次年度においても研究内容を海外論文誌に発表するために、英文校閲等の費用に使用する予定である。
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