2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
清水 広介 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30423841)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / リポソーム / スギ花粉症 / 逆標的化 / Cry j 1 / 根治療法 / B細胞 |
Research Abstract |
平成24年度は、スギ花粉より簡便に精製した主要抗原タンパク質Cry j 1を用いて調製した、Cry j 1修飾リポソームの標的特異性について検討を行った。生体分子相互作用機能解析装置ビアコアを用いてCry j 1修飾リポソームの抗Cry j 1 抗体に対する結合性を検討したところ、未修飾リポソームが抗Cry j 1抗体と結合性を示さなかったのに対し、Cry j 1修飾リポソームは抗Cry j 1抗体に対し高い結合性を示した。さらに、Cry j 1修飾リポソームはコントロール抗体とは結合しなかったことから、抗Cry j 1抗体のみと特異的に結合することが明らかとなった。次に放射標識したCry j 1修飾リポソームを用い、Cry j 1の腹腔投与により感作したスギ花粉症モデルマウスにおけるリポソームの体内動態解析を行った。リポソーム投与6および12時間後の各臓器、特に全身免疫の中心的な役割を担う脾臓への集積を比較検討したところ、未修飾リポソームとCry j 1修飾リポソームの脾臓への集積に差は見られなかった。そこで蛍光標識リポソームを用い、脾臓内におけるリポソームの分布を観察したところ、未修飾リポソームは投与後B細胞周辺に存在している様子が確認されたのに対し、Cry j 1修飾リポソームは時間が経つにつれてB細胞集団の内部へとリポソームが移行し、最終的にB細胞集団と共局在している様子が観察された。さらにより詳細な局在を調べるために、B細胞集団に含まれ、抗体産生の場として知られる胚中心への局在を調べたところ、Cry j 1修飾リポソームは胚中心と共局在することが確認された。これらの結果より、Cry j 1修飾リポソームは抗体産生を誘導するB細胞に認識されたことが示唆され、本研究の目的における逆標的化の標的特異性が証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施する研究としては、ビアコアを用いたCry j 1修飾リポソームの標的指向性の検討、スギ花粉症モデルマウスにおける体内動態解析および脾臓内分布解析を目標としてきた。前述のとおり、これらのマイルストーンに関してはすべて実施することができ、また想定していた結果を得ることができたため、研究は計画のとおり進んでいると言える。またスギ花粉からのCry j 1の精製について、さらに精製純度を高めるためにアフィニティークロマトグラフィーを利用した精製法の確立も並行して行ってきており、ほぼ100%の高純度精製法を確立することができた。またCry j 1修飾リポソームの調製法についても改良を重ねることにより、修飾率が安定して調製できるようになった。 以上のことから、当初の計画通り研究は進んでいると考えられ、現時点で目標は順当に達成できていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
【治療実験に向けた投与スケジュールの決定】 花粉症治療実験を行うのにあたり、最適な投与時期および投与量を決定する必要がある。本治療戦略においては、Cry j 1修飾リポソームが効率よく脾臓内の抗体産生細胞群に認識される時期が、高い治療効果を得るための鍵となる。そこでCry j 1免疫後、脾臓内B細胞が抗体産生細胞へと分化・成熟する時期を確認する。方法としては胚中心形成の程度や産生抗体量の変化を指標とする予定である。またリポソーム投与量と脾臓集積との関連性を明らかとし、効率よい治療の実現に向けた最適条件を決定する。 【DOX内封Cry j 1修飾リポソームを用いたスギ花粉症治療】 薬物内封Cry j 1修飾リポソームを用い、スギ花粉症モデルマウスに対する治療実験を行う。モデル薬物としては、高い細胞傷害性を有するドキソルビシン(DOX)を用いる。治療効果の指標としては、血中Cry j 1特異的IgE抗体およびIgG抗体量を測定するとともに、スギ花粉症のアレルギー症状であるくしゃみや鼻掻き行動の回数についても観察を行う。また副作用発現を確認するために、体重変化や血液中の血球数の変化についても確認を行う。さらにCry j 1による免疫以外の全身免疫システムへの影響を調べる。実際には治療を行ったマウスにおける脾臓細胞を採取し、LPS処理によるTNF-α等のサイトカイン発現への影響やOVAによる免疫後のOVA特異的抗体の発現への変化を調べる。また長期的な効果を調べるために、サンプル処置を行った数ヶ月後に再びCry j 1による免疫を行い、症状の惹起が抑制されるかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は体内動態実験や治療実験などを行う予定であるため、スギ花粉症モデルマウスを用いた実験が多くなることが予想される。またそれに伴い、Cry j 1抗原の投与量も増えることが想定されるため、平成25年度の研究費の多くは、スギ花粉や実験動物、その他Cry j 1定量および血中抗体価測定のためのELISA試薬の購入に費やすことが予想される。また脾臓細胞採取のためにMACS用試薬の購入も予定している。その他、平成25年度に行う実験のための大型機器設備は、すべて整っている。
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Research Products
(14 results)