2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790047
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
清水 広介 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30423841)
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / リポソーム / スギ花粉症 / 逆標的化 / Cry j 1 / 根治療法 / 脾臓B細胞 / 胚中心 |
Research Abstract |
平成25年度は、平成24年度において精製法を確立したスギ花粉抗原タンパク質Cry j 1を用いてCry j 1修飾リポソームの調製を行い、花粉症モデルマウスにおける体内動態試験、さらには細胞障害性薬剤内封Cry j 1修飾リポソームを用いて治療実験を行った。まず、リポソームの投与開始時期を決定するために、マウスへのCry j 1の腹腔内投与によって免疫した後の、脾臓における胚中心の形成について経時的に観察を行ったところ、1回目の免疫後から2週間後に胚中心が形成し始め、18日後にははっきりとした形成がみられその数も多くなっていることを確認した。このため初回感作から20日前後にサンプルを投与することを決定した。次にリポソームの投与量を決定するために、放射標識したCry j 1修飾リポソームを用いて、花粉症モデルマウスにおけるリポソームの脾臓への集積性について検討を行った。異なるリポソーム脂質投与量に対する脾臓集積の変化を検討したところ、リポソームは投与早期に脾臓に集積し、検討を行った最も低い投与量(主要リン脂質10 nmol)においてもその集積量に変化が見られないことを明らかとした。これらの結果をもとに、実際に治療実験を行った。リポソームへの封入薬剤としては細胞障害性の高いドキソルビシンを用い、初回免疫から19、21日目の2回、ドキソルビシン濃度として0.2 mg/kg/dayとなるように尾静脈内投与した。経鼻感作後の血中抗Cry j 1 IgE抗体価およびくしゃみの回数を評価したところ、ドキソルビシン内封Cry j 1修飾リポソーム投与群において、感作による抗体価上昇の有意な抑制ならびにくしゃみ回数の減少効果を見出した。これらの結果より、Cry j 1修飾リポソームを用いた逆標的化によるスギ花粉症治療は、有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、Cry j 1修飾リポソームを用いたスギ花粉治療に向けた投与スケジュールの最適化ならびに治療効果の解明の目標と実施を予定していた。前述のとおり、これらの検討についてはおおよそ実施できており、また想定していた結果を得ることができているため、研究は計画のとおり進んでいると言える。薬剤投与による副作用、特に他の免疫に対する作用やサンプル投与による長期的な効果の評価については、平成25年度中には実施できなかったため、次年度に行っていく予定である。一方で、平成26年度に実施予定の作用機構解析研究に向けた基礎検討として、磁気ビーズ(MACS)を用いた脾臓中B細胞の単離の条件検討を並行して進めてきており、FACSを用いた解析からすでにB細胞の単離に成功している。このため平成26年度の研究実施に向け準備は整っていると言える。 以上のことから、当初の計画通り研究はおおよそ進んでいると考えられ、現時点で目標は順当に達成できていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
【治療効果のメカニズム解析】平成25年度の研究にて明らかとなったドキソルビシン内封Cry j 1修飾リポソームによるスギ花粉症治療効果の機構解明、すなわち逆標的化を利用した花粉症治療戦略の全貌を明らかとする。方法としては、スギ花粉症モデルマウスの脾臓内B細胞を用いたリポソーム結合試験や細胞増殖試験、組織切片を用いたリポソームの分布解析ならびにアポトーシス細胞の同定、胚中心形成への影響などの評価を行う。また他の免疫への影響を調べるために、別の抗原、例えばオブアルブミン(OVA)抗原を免疫した際の抗OVA抗体発現への影響や、脾臓B細胞のサイトカイン発現ならびに血球数への影響について検討を行う。 【長期的治療効果の評価】逆標的化戦略の最大の利点ともいえる、花粉症根治の可能性の評価を行う。方法としては、サンプル処置を行った数ヶ月後に再び感作した際の抗体価の測定や花粉症症状の発現の有無について調べる。 【研究成果の発表】これまでの研究期間内に得られた研究成果について、国内外を問わずに学会における成果発表を行っていく。また結果がまとまり次第学術論文にて発表することで世界に向けて本研究の重要性を発信していく。
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Research Products
(6 results)