2013 Fiscal Year Annual Research Report
記憶・学習における情報伝達物質としての脂質の役割:神経幹細胞に対する影響について
Project/Area Number |
24790234
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
片倉 賢紀 島根大学, 医学部, 助教 (40383179)
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Keywords | fatty acid / docosahexaenoic acid / neurogenesis / docosanoids |
Research Abstract |
脳はその重量の約40%が脂質である。その脂質の中にはドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸(ARA)などの多価不飽和脂肪酸(PUFA)が多く含まれる。PUFAは脳の発達や機能維持に重要であるが、脳内での生合成量は少なく、食餌などからの摂取が必要である。また、脳内でPUFAは細胞膜の成分となるだけでなく、PUFA未変化体または細胞内で代謝され生成するプロスタグランジン類やプロテクチンは、情報伝達物質として働き、神経細胞の保護、神経細胞の成熟や細胞死などに関与している。PUFA摂取の過不足は、脳の細胞膜の脂肪酸組成を変化させる。この変化は、脳の正常機能に影響を与えるとともに、神経変性疾患や精神疾患の発症との関連が指摘されている。PUFAによる神経幹細胞の増殖、分化の調節は記憶・学習能の向上に関与することを明らかにし、その詳細な機構の解明を目指した。神経幹細胞のニューロンへの分化はエイコサペンタエン酸 (EPA) によっても促進されるが、その機構はDHAのものとは異なることを明らかにした。また、PUFA受容体のGタンパク質共役受容体(GPR)40と120作動薬を神経幹細胞に作用させると、ニューロンのみならずグリアへの分化も促進されることが明らかとなった。また、n-3PUFAを投与したラットでは記憶学習能が向上するとともに、n-3PUFA代謝産物が増加した。以上のことから、外因性のn-3PUFAによる記憶学習能向上の一因として、神経幹細胞のニューロンへの分化促進作用と、n-3PUFA代謝物による脳機能更新作用が関与していることが示唆された。
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Research Products
(12 results)