2012 Fiscal Year Research-status Report
肥満により誘発される不安とうつ症状の脳内機構:PrRPニューロンの働き
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24790237
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
吉田 匡秀 自治医科大学, 医学部, 助教 (30533955)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | PrRP |
Research Abstract |
肥満と不安、うつ症状には密接な関連があることが判ってきている。肥満による中枢でのレプチン作用の低下(レプチン抵抗性)は、不安、うつ様行動を惹起するが、その脳内作用メカニズムは判っていない。脳内プロラクチン放出ペプチド(PrRP)はレプチンによって発現が調節される。本研究は、レプチン抵抗性による不安、うつ様行動惹起の原因が脳内PrRP機能の減弱に依るものであるという仮説を、PrRP産生ニューロンを時間的、空間的に選択的破壊できる遺伝子改変動物を用いて検証する。本年度は精神的なストレス時におけるPrRPの機能を明らかにするための実験を行った。 延髄PrRP産生ニューロンは精神的なストレスである条件恐怖により活性化された。PrRP遺伝子欠損マウスは条件恐怖時の神経内分泌反応が消失していた一方で、すくみ行動が増強されていた。扁桃体は情動反応に重要であるが、その一部である内側扁桃体を破壊すると条件恐怖時の延髄PrRP産生ニューロンの活性化が有意に減少していた。内側扁桃体を破壊するとすくみ行動に変化はなかったが、神経内分泌反応が減弱していた。現在までの我々の研究から延髄PrRP産生ニューロンは神経内分泌細胞が存在する視床下部に直接投射していることが判っている。以上の結果から、精神的なストレス時の神経内分泌反応には内側扁桃体-延髄PrRP産生ニューロン経路が重要な働きをしていることが判った(論文投稿中)。PrRPは精神的なストレスに対する適応反応に寄与している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精神的なストレスに対する適応反応におけるプロラクチン放出ペプチド(PrRP)の役割を解析した。PrRPが条件恐怖時に神経内分泌、行動反応の両者に関わることが判った。また精神的なストレス時の神経内分泌反応に関わる経路を明らかにした(論文投稿中)。
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Strategy for Future Research Activity |
プロラクチン放出ペプチド(PrRP)が精神的なストレス時の神経内分泌、行動反応に関わることが明らかとなり、精神的なストレス時の神経内分泌反応経路におけるPrRPの重要性を明らかにした。来年度は、まず精神的なストレス時の行動反応とPrRPの関連性を明らかにする。条件恐怖時のすくみ行動の発現には基底外側扁桃体-中心扁桃体-中心灰白質経路が関わることが知られている。この経路内におけるPrRPの作用部位を明らかにしていく。この作用部位に特に着目し、不安行動、うつ様行動におけるPrRPの役割に関しても解析を進める。またPrRPが関与する神経内分泌経路および行動反応経路が、肥満によるレプチン抵抗性によって影響を受けるかについて解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に予定していた国内学会への参加を取り止めた。来年度、消耗品費の生化学研究試薬およびPCR様試薬として使用予定である。
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