2012 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性血管石灰化におけるサイクロフィリンAの役割解明
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24790254
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
石澤 有紀 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 特任助教 (40610192)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 血管石灰化 / サイクロフィリンA / Rho-kinase / 糖尿病 |
Research Abstract |
糖尿病患者に特徴的に見られるメンケベルグ型中膜石灰化形成の分子メカニズムとして近年、高血糖や酸化ストレスなどが血管平滑筋細胞の骨分化シグナルを活性化することによってカルシウムの沈着が惹起されていることが明らかになってきた。さらにRho-kinase阻害剤が、血管石灰化抑制作用を有する可能性が示唆されている。一方、サイクロフィリンAは、1.酸化ストレス感受性蛋白である。2.カルシニューリンの上流にあり細胞内カルシウム動態に関与している。3.Rho-kinase阻害剤によって阻害される。4.大動脈瘤形成など心血管疾患の発症に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきている。今回、病理解剖によって得られたヒト大動脈組織を用いた検討により、粥腫形成が著明で石灰化を認める糖尿病患者の動脈壁において、血管平滑筋細胞の骨芽細胞様細胞への分化マーカーであるといわれているRunx2の発現が増加していることを確認した。同時にサイクロフィリンA発現の増加も血管平滑筋層・粥腫内において観察された。さらに、2型糖尿病db/dbマウスの大動脈壁においてサイクロフィリンAおよびRunx2の発現が増加していることが明らかとなった。このことからサイクロフィリンAの石灰化への関与が強く示唆された。一方、培養ラット大動脈血管平滑筋細胞を用いて石灰化の形成に関わる細胞内シグナル伝達経路を検討したところ、無機リン刺激によりRho-kinaseの活性が上昇することが明らかとなった。Rho-kinase阻害剤であるY-27632およびサイクロフィリンA阻害剤の前処置は石灰化シグナルに関与すると言われているERK1/2の活性化を抑制した。さらにY-27632は無機リン刺激によるアルカリフォスファターゼ活性も抑制し、無機リン刺激による石灰化あるいは骨分化経路にRho-kinaseが関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト組織の解析、マウスを用いた検討、さらに培養細胞を用いた検討を同時進行で行っており、サイクロフィリンAあるいはその分泌に関与していると考えられるRho-kinaseの活性化が骨分化に関与する可能性を明らかにした。具体的には 1.糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)の血管石灰化病変の解析:db/dbマウスを20週齢まで飼育し、その大動脈におけるサイクロフィリンAの発現および骨分化マーカーの発現を検討した。石灰化病変をモデルマウスで作製するためには長期間飼育する必要があるため、次年度においてさらにin vivoの検討を進める予定である。 2.VSMCにおけるサイクロフィリンAの石灰化シグナルへの関与の解明:石灰化誘導刺激(高リン刺激、BMP-2刺激)に対し、VSMCにおいてサイクロフィリンAの活性化もしくは自己分泌が起こるか否か検討している。サイクロフィリンA阻害剤、Rho-kinase阻害剤の石灰化シグナルへの影響を検討した。 3.ヒト剖検組織におけるサイクロフィリンA発現、骨分化マーカー分子発現の比較検討:徳島大学病院病理部にて病理解剖された検体について、大動脈~細動脈の肉眼的所見と病理学的検討を行った。引き続き症例を蓄積する。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の計画に沿って研究を推進する。In vitroの検討はすでに初年度に開始しているため、サイクロフィリンAの関与を明らかにする上で不充分な点に関してさらに検討を重ねる。次年度はin vivoにおける石灰化モデルが完成し次第、その解析を重点的に行う。具体的には、 1.糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)の血管石灰化病変の解析と各種薬物によるサイクロフィリンA阻害の糖尿病性血管石灰化に対する影響検討:糖尿病モデルマウスに対し、サイクロフィリンAを阻害しうる各種薬剤を投与し、血管石灰化病変の形成に影響を及ぼすか否か検討する。培養細胞を用いた実験にて石灰化シグナル抑制効果を示す可能性が示唆されたサイクロフィリンA阻害剤またはRho-kinase阻害剤であるY-27632をdb/dbマウスに投与し、血管病変の解析を行う。 2.サイクロフィリンA欠損が糖尿病性血管石灰化病変の形成に与える影響検討:糖尿病モデルマウスを、サイクロフィリンAをコードする遺伝子の欠損(Ppia-/-)マウスと交配させ血管病変形成への影響を検討する。 3.培養血管平滑筋細胞における石灰化シグナルに対するサイクロフィリンAの関与の解明:初年度に引き続き、無機リン刺激による石灰化誘導シグナルにおけるサイクロフィリンAの関与を明らかにするため、薬理学的手法を用いて検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究計画を遂行するため、次年度も引き続き糖尿病モデルマウスの維持・解析および細胞培養実験とその準備に関わる費用が主な必要経費となる。動物の購入・維持費、動物投与用試薬、各種抗体・形態解析用試薬、分子生物学・生化学関係試薬などの購入を予定している。研究計画の最終年度となるため、学会発表や論文投稿料・英文校正にかかる費用を「その他」の費目として計上する予定である。
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Research Products
(26 results)