2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790308
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山下 年晴 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50400677)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | がん転移 / 低酸素応答 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
低酸素応答転写因子(HIF: hypoxia inducible factor)が低酸素ストレスに対する応答だけでなく,様々な生理機能を有していることが明らかになりつつある.特に血管内皮細胞における接着因子の制御にHIF が関与している事が興味深い.血管形成に関与しているHIF-2α, HIF-3α が血管内皮細胞で発現していること,また血管構造とがん転移は高い相関性を示すことから考えてHIF 因子ががん転移に関与している事が予想される.そこで本申請課題では血管におけるHIF とがん転移の関連を,遺伝子改変マウスを用いてin vivo, in vitro の両面から明らかにすることを目的とする.HIF の研究分野においては,低酸素応答と腫瘍血管新生や腫瘍の増殖に関連する研究が主であり報告が多数あるが,転移と宿主細胞におけるHIF の関連性を詳細に解析している報告は無い.そこで本申請課題では血管内皮細胞におけるHIF-2α およびHIF-3α の転移臓器における機能だけでなく,原発腫瘍において腫瘍細胞が転移性を有するに至る過程にどのような関わりがあるのか解析する.これまでの解析において,血管内皮細胞におけるHIF-2αが転移結節数に影響を及ぼすことは分かっていた.血管内皮細胞のHIF因子が転移形成に重要であることはレスキューマウス実験から明らかとなったため,転移好発部位である肺から血管内皮細胞を野生型HIF-3a欠損マウスより単離して,関連因子の発現解析を行った結果,血管を構築する上で重要なアンジオポエチン,VEカドヘリンの発現が亢進していることが明らかとなった.またHIF-3α欠損体では,他のHIF因子の活性が上昇していたことから,標的遺伝子制御において直接的な作用だけでなく,HIFの制御を介した作用の存在を示唆するデータが得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
転移に血管内皮細胞が重要である事だけでなく,そこで発現する関連因子の制御にもHIF因子群が重要である事が明らかとなった.さらにその制御機構に新しいメカニズムの存在を示唆する結果が得られ始めており,計画は予定通り進行していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
血管内皮細胞を材料として,新たに存在が示唆された,HIF因子間の相互制御の分子機構を明確にしていくと共に,HIF 遺伝子機能を的確に解析できる遺伝子改変動物実験モデルとして,より実際の病態に近い原発巣からの転移モデルにて転移能と関連因子の発現との相関性を解析する.またHIF-2αおよびHIF-3αの複合変異マウスを作製し,その機能をin vivo, in vitroの両側面から解析を勧める.これまでに血管内皮細胞におけるHIF-2α が血行性肝転移巣形成の初期に関与していることを示唆するデータが得られている.またHIF-3α欠損血管内皮細胞ではHIF-2αの活性が亢進している結果も得られており,これらの因子が転移巣形成に関与している可能性は非常に高く,研究の成果が期待できる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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