2012 Fiscal Year Research-status Report
新しい組織・細胞恒常性保護因子PERIPLAKINの機能解析
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24790314
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 慎二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定助教 (50362512)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Periplakin / 肝臓 / 胆汁鬱滞 |
Research Abstract |
PeriplakinはPlakinファミリーに属し、アクチンや中間径フィラメントなどの細胞骨格タンパク質や、細胞内シグナル伝達分子とを互いに結びつけるサイトリンカー分子であると考えられている。我々はこれまでに肝臓におけるPeriplakinの発現量が、胆汁鬱滞に応答して極めて強く誘導されることを見出した。また、他の研究グループはPeriplakinの発現が食道上皮細胞の癌化過程で劇的に減少することを報告している。これらは、Periplakinが単なるサイトリンカー分子ではなく、様々な局面において生体恒常性維持に寄与する、多機能性分子である可能性を示唆している。本研究は生体におけるPeriplakinの役割を解明することを目的とするが、本年度は、まず、タンパク質レベルでのPeriplakinの作用点のスクリーニングを行った。胆管結紮を施した場合と、通常の飼育状態の肝臓においてPeriplakinに結合する分子を、抗Periplakin抗体を用いる免疫共沈降と、質量分析装置(LC-MS/MS)を用いる解析によって同定した。また、近交系であるC57BL/6JJclに十分な回数戻し交配することによって遺伝的背景を純化したPeriplakinノックアウトマウスと、対照となるC57BL/6JJclマウスとの間で、肝臓におけるプロテオーム構成を網羅的に比較し、いくつかのタンパク質の発現量が両者で著明に異なっていることを見出した。これまでにPeriplakin結合分子や、Periplakinの影響を受けて発現を変化させる分子は培養細胞でしか報告されていなかったことから、本研究の成果によって、Peripkakinの実際の生体内での機能を理解する上で、今までにない重要な手がかりが得られる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はPeriplakinノックアウトマウスと、対照となるC57BL/6JJclを素材とし、生体内でのPeriplakinの作用点を、主にタンパク質レベルで見出すことを試みた。まず、Periplakinに結合する分子を、抗Periplakin抗体を用いる免疫共沈降により、幅広い条件下で探索した。肝臓組織抽出液からの免疫共沈降に至適な抗体の選定や、結合、洗浄等に至適なプロトコルの開発に相当の時間を費やしたが、それぞれの条件下で、C57BL/6JJcl の肝臓抽出液からは共沈降されるが、Periplakinノックアウトマウスの肝臓抽出液からは共沈降されない、Periplakin結合分子の候補を多数見出すことに成功した。さらに、質量分析装置(LC-MS/MS)を活用するプロテオミクス解析系を我々自身で行い、これらのタンパク質を実際に同定することに成功した。これらのうち、胆汁鬱滞時に極めて強く発現が誘導される分子については、胆汁鬱滞下でPeriplakinと協働しながら生体恒常性維持に寄与する可能性が高いため注目している。また、胆汁鬱滞下と、通常の飼育状態下の肝臓においてPeriplakinノックアウトマウスと、対照となるC57BL/6JJclマウスの肝臓プロテオーム構成を比較し、それぞれの条件下において、両者で発現量が大きく異なるタンパク質を多数見出すことに成功した。以上の結果から、本年度の主要な目的として設定していたPeriplakinの生体内での作用点の同定については、一定以上の進捗があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に見出したPeriplakinと相互作用する分子や、Periplakinの有無により発現量を変化させるタンパク質といった、Periplakin標的分子群とPeriplakinとが実際にどのように協働し生体恒常性維持に寄与しているのかを、主にPeriplakinノックアウトマウスと対照となるC57BL/6JJclマウスを用いるin vivoでの解析を行うことによって解明する。組織や細胞内での局在の変化を詳細に検討することによって、これらの分子群とPeriplakinが動的に相互作用する様子を追跡する。また、Periplakinノックアウトマウスと対照となるC57BL/6JJclに対して、今回同定した標的分子群の機能に関連する様々なゆらぎを与え、両者の表現型にどのような違いが見られるかを広く検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Periplakinノックアウトマウスと、対照となるC57BL/6JJclのコロニーを大規模に維持する必要があることから、飼育費用や特殊飼料の購入に相当の費用を必要とする。また、抗Periplakin抗体をはじめとする、各種プロテオミクス解析や、分子生物学的解析に用いる試薬消耗品類の購入が必須である。また、次年度においては研究成果の発表を予定していることから、学会発表と論文発表に関して、旅費、英文校正費、論文投稿費として相当額を使用する。
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