2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790319
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西尾 美希 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (10467897)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 発がん / Mob / シグナル伝達 / 発生 |
Research Abstract |
本研究ではHippo経路の主要な構成因子であり、ヒト腫瘍で高頻度に異常を認め、個体レベルの機能が未だ全く不明であるMob1AとMob1B遺伝子に注目し、Mob1A/Mob1Bを介した個体発生・分化制御機構やその異常によるがんなどの疾患発症の有無やその機構を解明するため、Mob1AおよびMob1B欠損マウスを作製した。Mob1A/Mob1Bダブルホモ欠損マウスは原始内胚葉形成不全のために胎生致死となることからMob1AおよびMob1Bが個体発生に重要であることを見いだした。また、Mob1AホモMob1Bヘテロや、Mob1AヘテロMob1Bホモの部分欠損マウスには、全例に様々な腫瘍形成を認め、これらの腫瘍ではLOHを認めたことから、Mob1A/Mob1Bが古典的ながん抑制遺伝子であることを示した。Mob1A/Mob1B部分欠損マウスに発症した腫瘍のうち皮膚外毛根鞘がんを最も高頻度に認めために、次にケラチノサイト特異的Mob1A/Mob1Bダブルホモ欠損マウスを作製したところ、Mob1A/Mob1Bダブルホモ欠損ケラチノサイトでは、細胞増殖亢進、細胞死抵抗性、コンタクトインヒビション障害、細胞分裂異常、未分化性の亢進がみられた。さらにヒト皮膚外毛根鞘がんの約半数以上でMob1A/Mob1Bの発現減弱を、7割以上でHippo経路下流に位置するYapの蛋白質量増加や核移行増加を認めたことから、原因が全く特定されていないヒト皮膚外毛根鞘がんの原因遺伝子であることも示し、Hippo経路は皮膚外毛根鞘がんを含む種々のがん抑制戦略の重要な標的となることを明示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mob1A,Mob1B単独ホモ欠損マウスには異常はみないが、Mob1A/Mob1Bダブルホモ欠損マウスは着床直後に致死となることを見出した。そこで平成24年度は、(1)後期胚盤胞および ES細胞をin vitroで分化後、細胞系譜マーカーの発現を検討することで、原始内胚葉形成不良が致死の原因であることを見いだした。 (2) 次に Mob1A/Mob1B部分欠損マウスを長期観察したところ、皮膚がん(100%)、骨肉腫、筋線維肉腫、肝がん、乳がんなど様々な腫瘍を全例に認めた。また、これら腫瘍ではLOHを認めたことから、Mob1A/Mob1Bが古典的ながん抑制遺伝子として作用することを示した。(3)またケラチノサイト特異的にMob1A/Mob1Bをダブルホモ欠損するマウスを作製した。このマウス上皮ではK5,14,15,などの未分化マーカーが増加し、K10, filaggerinなどの分化マーカーが減少しており分化障害を認め、ダブルホモ欠損ケラチノサイトは、細胞増殖亢進、細胞死抵抗性、コンタクトインヒビション障害、未分化性や自己複製能亢進、中心体数増加を認めたことから、これらの作用がMob1欠損による腫瘍の発症・進展を加速させた要因であることを示唆した。生化学的には、LATS1/2のリン酸化や蛋白質安定化障害を認め、下流のYAPの強い活性化を認めた。また、Mob1A/Mob1B部分欠損マウスにみられた皮膚がんは、K17陽性の外毛根鞘がんであり、またヒト外毛根鞘がんでは高頻度なMob1A/Mob1B蛋白質の発現低下とYAP1蛋白質の活性化亢進を認めたことから、Mob1を含むHippo経路がヒト外毛根鞘がんの原因遺伝子の一つであることを見出した。このようにMob1A/Mob1Bを介した個体発生や腫瘍発症の有無、その機構の一端を明示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに作製されたHippo経路分子変異マウスのいくつかにおいて肝がんの報告があること、またMob1A/Mob1B部分欠損マウスを長期観察すると肝がんを発症することから、(1)Alb-Creトランスジェニックマウスを用いて肝細胞に特異的なMob1A/Mob1Bダブルホモ欠損マウスを作製し、肝臓におけるMob1A, Mob1Bの作用を明らかにする。具体的には肝臓や胆管の形態形成・機能変化・腫瘍形成を明示する。さらにAFP, A6, Trap2等の抗体で染色することにより、肝細胞や胆管細胞の分化の障害の有無、肝切除後の肝再生能等も検討する。さらに皮膚と同様に、細胞増殖、細胞死、細胞飽和密度、中心体複製、micronuclei, M期からの離脱時間、幹細胞(オバール細胞)の数も検討する。その他Hippo経路のシグナルコンポーネントの活性変化なども同様に検索する。これらに加えて、(2)SPC-rTA/otet-Creトランスジェニックマウスを用いて、肺胞・細気管支上皮細胞に特異的なMob1A/Mob1Bダブルホモ欠損マウスをも作製し、肺におけるMob1A, Mob1Bのi n vivo作用も同様に明らかにする。このように各組織におけるMob1A/Mob1Bの作用の共通性を明示し、さらにこれまで報告されている他のHippo経路分子の遺伝子欠損マウスの表現型と比較して、Hippo経路の作用の共通性を類推する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|