2013 Fiscal Year Research-status Report
Wntシグナルによる胃上皮細胞の増殖・分化制御機構の解明
Project/Area Number |
24790381
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
平田 暁大 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 助教 (30397327)
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Keywords | β-カテニン / Wntシグナル / 胃 / 胃癌 / 細胞増殖 / 細胞分化 |
Research Abstract |
Wntシグナルは、β-cateninが細胞内に蓄積することにより活性化される。昨年度、安定型のβ-cateninの発現を誘導可能なβ-catenin inducibleマウスを用いて、胃上皮細胞においてWntシグナル活性化が及ぼす影響を組織学的に解析した。その結果、β-catenin の強制発現により、マウスの胃底腺、幽門腺、いずれにおいても、胃上皮細胞の増殖が亢進し、分化が抑制されることを明らかにした。 本年度は、その分子機構を明らかにするため、β-catenin の強制発現により変動する遺伝子の検索を行った。β-catenin を強制発現したマウスの胃底腺、幽門腺から、腺管分離法により胃上皮細胞を選択的に採取し、リアルタイムPCRおよびマイクロアレイに供した。リアルタイムPCRにより、β-catenin の強制発現により、Myc、Ccnd1、Sox9などのWntシグナルの標的遺伝子の有意な発現亢進、表層粘液細胞の分化マーカーであるMuc5acの有意な発現抑制、胃上皮幹細胞のマーカーとなるLgr5およびSox2の有意な発現亢進を認めた。さらに、マイクロアレイの発現データのパスウェイ解析を行ったところ、2倍以上発現亢進した遺伝子には「Wnt signaling pathway」に加えて「Hippo signaling pathway」に関連する遺伝子が有意に多く含まれることが明らかとなった。 さらに、β-catenin inducibleマウスの解析により得られた結果がヒトの胃癌に外挿できるか検討するため、ヒトの早期胃癌の病理組織サンプルを用い、β-cateninの発現と細胞増殖、細胞分化との関連を検討した。その結果、β-cateninの核への蓄積が見られた病変では、病変粘液の産生が乏しく、分化による細胞増殖の抑制が見られないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、(1)胃上皮細胞においてWntシグナルの活性化がもたらす形質変化を明らかにし、(2) Wntシグナルの活性化により発現変動する遺伝子を解析し、形質変化の基盤となる分子機構を明らかにすることである。 (1)については、昨年度、安定型のβ-cateninの発現を誘導可能なβ-catenin inducibleマウスを用いて、胃上皮細胞においてWntシグナル活性化がもたらす形質変化を組織学的に明らかにしている。さらに、これまでに、Wntシグナル活性化による形質変化マウスおよびヒトの胃癌組織に外挿できることを明らかにした。 (2)については、今年度、形質変換を起こしたβ-catenin inducibleマウスの胃上皮細胞を採取し、リアルタイムPCRおよびマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行い、現在、マイクロアレイデータの解析を進めているところである。 研究期間1年を残して、(1)形質発現変化についてはすでに解析を終え、(2)形質変化の基盤となる分子機構の解析にもすでに着手し、その解析を進めており、研究は順調に進展しており、研究機関中に研究目的を達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【形質変化の基盤となる分子機構の解析】β-cateninの強制発現による誘導される胃上皮細胞の形質変化の基盤となる分子機構を明らかにするため、マイクロアレイデータのGene ontology解析およびパスウェイ解析を進める。 【外挿性の検討】β-cateninの強制発現により発現亢進した分子あるいは活性化したパスウェイが、胃上皮幹細胞あるいは胃癌細胞といった未分化な上皮細胞において実際に発現亢進あるいは活性化しているか解析する。 (1) 胃上皮幹細胞における解析:胃上皮幹細胞をGFPで標識可能なLgr5-GFPノックインマウスを用いて、胃上皮幹細胞における発現、活性を免疫組織学的に検索する。 (2) 胃癌細胞における解析:マウスおよびヒトの胃癌の病理組織サンプルおよび胃癌細胞株を用いて、胃癌細胞における発現、活性を検索する。胃癌細胞には、β-cateninの蓄積している細胞、蓄積していない細胞があり、その有無による発現、活性の違いを明らかにする。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] IDO1 plays an immunosuppressive role in 2,4,6-Trinitrobenzene sulfate-induced colitis in mice2013
Author(s)
Takamatsu M, Hirata A*, Hoshi M, Ohtaki H, Hatano Y, Tomita H, Kuno T, Saito K, and Hara A
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Journal Title
Journal of Immunology
Volume: 191
Pages: 3057-3064
DOI
Peer Reviewed
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