2012 Fiscal Year Research-status Report
ミューテーターマラリア原虫のゲノムワイド変異解析:分子疫学的・実験的研究
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24790401
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
本間 一 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10617468)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マラリア / ミューテーター / Plasmodium / 分子疫学 / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
マラリア制圧において大きな問題となっている薬剤耐性熱帯熱マラリア原虫の出現は著明な地理的偏在を示すことが近年の研究により明らかにされているが、その理由はわかっていない。本研究では、ゲノムに突然変異を蓄積しやすいミューテーター原虫がこの事象に関わるという仮説の検証を行うことを目的とし、平成24年度は以下の研究を実施した。 1. ミューテーター形質を賦与する遺伝子変異の同定 本テーマでは、世界中の熱帯熱マラリア原虫についてDNAポリメラーゼやDNA修復に関わる種々の遺伝子について網羅的にシーケンシングを行い、その多型性を明らかにする。血液濾紙から抽出したDNAの量は限られることから、数多くの遺伝子領域を解析するのは困難である。そこで、まず希少なDNA検体をゲノム増幅することで増やし、PCRのテンプレートとすることを着想した。PCRに用いるプライマーは、すでに公開されている熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparum 3D7株のゲノムを参考に設計した。フィールドで得られたDNA検体をゲノム増幅し、それをテンプレートにPCRの条件検討を重ね、DNAポリメラーゼ遺伝子:7個、DNA修復関連遺伝子:8個、DNA複製関連遺伝子:2個を標的とするプライマーを得た。 2. ミューテーターマラリア原虫を用いたマウス感染実験系による薬剤耐性原虫の創出 本テーマでは、P. bergheiのDNA polymerase deltaの校正機能欠損により開発したミューテーターマラリア原虫について、マウス感染実験系により薬剤耐性獲得能を検証する。平成24年度は、感染実験を行うための環境を整え、ミューテーター原虫の継代作業を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は実験に用いる病原体の移動や、実験環境の整備など準備に時間を要し、感染試験の進捗に遅れがでた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、平成24年度の実験の続きを行う。 1. ミューテーター形質を賦与する遺伝子変異の同定 今年度は、世界中の熱帯熱マラリア原虫についてゲノム増幅反応を行い、PCRのためのテンプレートの調製を行う。得られるDNA検体について昨年度に設計したプライマーを用いて標的遺伝子のPCRを行う。PCR産物は検体ごとにプールして次世代シーケンサーによる大規模シーケンシングに用いる。得られるリードデータは、P. falciparum 3D7株のゲノム配列にマッピングすることで変異箇所の特定に用いる。これにより熱帯熱マラリア原虫のDNAポリメラーゼ遺伝子やDNA修復関連遺伝子の多型性を地域ごとに明らかにする。また、解析した遺伝子領域において検出された変異の中から、ミューテーター形質を付与する可能性のある遺伝子変異を他生物における先行研究を参照することで探索する。 2. ミューテーターマラリア原虫を用いたマウス感染実験系による薬剤耐性原虫の創出 今年度はミューテーターマラリア原虫を用いて薬剤耐性原虫の創出を目指す。薬剤耐性原虫の効率的な創出には、多くの変異を内包したマラリア原虫ライブラリを構築することが有用であると考えられる。そのために、まず接種する感染赤血球数を多くした継代を行う。これを一定期間続けたあと、クロロキンやルメファントリンなどの抗マラリア薬投与を開始して薬剤耐性原虫の創出を行う。耐性原虫の創出に成功した場合には、次世代シーケンサーを用いてゲノムシーケンシングを行い、耐性賦与に関わる遺伝子変異を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は感染実験の準備に時間を要し本格的に始めることができなかったため、平成25年度に繰り越した研究費が発生した。平成25年度における研究費の主な使途は遺伝子解析に必要な試薬などの消耗品と感染実験に使うマウスである。得られた研究結果については今年度末の学会で発表を行う予定であり、旅費が必要になる。
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Research Products
(4 results)