2012 Fiscal Year Research-status Report
計算生物学・構造生物学的手法によるIII型分泌機構の構造基盤及び分泌シグナルの解明
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24790411
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 慶治 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00554586)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / カナダ |
Research Abstract |
高速原子間力顕微鏡を用いたInvCのリアルタイム観測を行い、III型分泌における構造基盤の解明を目指した。まずは二本鎖DNA、GroEL、アクチンといった標準サンプルの観測を行い、観測システムのセットアップを終えた。また、同様のAAAファミリーのATPaseであるClpXのオリゴマー状態の観測、基質の基盤への固定、アンフォールディング過程のリアルタイム観測を実施し、タンパク質のオリゴマー状態及び基質の結合・解離を判別可能な解像度におけるリアルタイム観測に成功した。本解析法は、基質の結合・解離のカイネティクスやアセンブリー状態のダイナミクスの観測が可能な解析システムであることが確かめられ、同様のATPaseであるInvCにそのまま適用可能である。同様の基質固定化法と観測システムを用いて実際のInvCのタンパク質サンプルを観測したが、リング構造の観測に難航しており、精製条件、観測時の溶媒条件、基盤の種類、固定化条件の検討を重ねている。特にInvCは細胞膜近傍に存在するため疑似細胞膜構造の再現が重要であると考え、脂質二重膜、脂質パッチ型基盤等様々な膜構造モデル上での固定条件について検討を重ねたが最適な観測条件の設定には至っていない。 生化学実験と並行して分子動力学計算によるInvC6量体モデルの構築、基質 SopA-InvC複合体構造のドッキング解析を実行し、ポア内部に存在する結合領域を予測した。基質存在下でInvCサブユニット間親和性が上昇することが分子動力学計算により示され、基質の結合と共にInvCオリゴマー化が促進されることが示された。本解析結果を高速原子間力顕微鏡解析へとフィードフォワードすることで、観測条件の設定を推進することができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
InvCの精製条件の検討に時間を要し、InvCのオリゴマー状態の観測、安定化状態の探索に難航しており、生化学的解析の部分について少し計画からの遅れがある。高速原子間力顕微鏡についても機器のチューンナップや測定技術の習得に時間を要した。理論計算の実施と構造解析については順調に進んでいるが、生化学実験の遅れがあるため相互補助的な展開へと繋がっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きInvCの生化学的解析と高速原子間力顕微鏡での観測を進める。InvCのアセンブリーダイナミクスに関しては、ATPase活性の測定によってもモニタリング可能であり、高速原子間力顕微鏡での観察条件の設定に役立てる。また、分子間相互作用解析システムOctet96を利用した基質との相互作用解析を推進する。InvCを基盤上に固定する方法としてLys6タグを用いたアミンカップリング法やHis6タグ-NiNTA相互作用を利用したキャプチャ法等様々な固定化条件を検討する。また、疑似脂質二重膜構造の構築が上手く行っていないことがInvCのアセンブル状態の観測ができない大きな原因と考え、サルモネラinverted membraneを調整し、内膜を細胞内側から高速原子間力顕微鏡で直接観測する条件を検討する。 また、一定の解像度で高速原子間力顕微鏡の像を捉えることが出来るようになってきたため、インシリコドッキング解析とSPMシミュレータを組み合わせ、高速原子間力顕微鏡像からInvC-基質相互作用複合体構造を再構築する技術の開発を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Octet96(バイオレイヤー干渉法)を用いた分子間相互作用解析を行なうためのセンサーチップ及び試薬類を購入する。InvCの精製条件及び固定化条件の検討事項としてアフィニティータグの種類や融合の位置の検討を考えており、遺伝子組換え実験やタンパク質精製に使用する試薬類も合わせて購入する。 高速原子間力顕微鏡による解析では、熊本大発生医学研究所の原子間力顕微鏡をお借りする予定であり、旅費及び解析用プローブ(カンチレバー)・試薬の購入に使用する。 24年度の予算の未使用分として1,389,474円の研究費を25年度に繰り越して使用する。高速原子間力顕微鏡による解析システムのセットアップと条件検討に予定より時間がかかり、予定していた一部の実験の実施が遅れているためであるが、25年度においては大学院生の補助を得ることができ、遅れた分の実験を実行する計画である。本繰り越し分では、高速原子間力顕微鏡解析の解析用プローブや各種基盤構築用試薬の購入費、そして生化学実験(相互作用実験)の試薬類を購入する。さらに、構造解析用の演算サーバーの機能増設及び成果発表(国内学会発表の旅費、論文投稿)の費用にも使用する予定である。
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