2013 Fiscal Year Research-status Report
TSPO-PETによる肝疾患画像診断法の開発及び発生機序の解明に関する研究
Project/Area Number |
24790543
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
謝 琳 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 博士研究員 (30623558)
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Keywords | 生体分子 |
Research Abstract |
本研究は申請者らが開発したTranslocator protein (18kDa)(TSPO)の特異的なプローブを用い、PETイメージングにより代表的な肝疾患である脂肪肝、肝癌に対し早期、定量かつ非侵襲的に画像診断及び機序の解明を目指す。 平成24年度、研究代表者らは、TSPO特異的な [18F]FEDAC-PETを行うことにより、マウスにおける脂肪肝の発症及び進行を診断する手法を世界で初めて確立した。平成25年度、我々は、TSPOが脂肪肝病態進行における役割と作用機序について、[18F]FEDAC-PETとTSPOノックアウトマウスを用い検討した。 C57BL/6系TSPO ノックアウト(KO)マウスおよび野生型(WT)マウスの肝臓組織を摘出し、網羅的な遺伝子発現をマイクロアレイにより解析した。その結果、KOマウスはWTマウスより肝臓にTSPOの発現量が1.94倍に減少したところ、ミトコンドリア、糖脂質代謝、免疫反応、線維化及びアポトーシス等に関連する750個遺伝子の発現量が変動し、多くの遺伝子群が動員された。また、メチオニン・コリン欠損食(MCD食)をKOマウスおよびWTマウスに0、2、4、6週間に与え、モデルマウスを誘導し、比較検討を行った。その結果、MCD食を与えたWTマウスにおいて、脂肪肝の病態進行に伴い、肝臓における[18F]FEDACの放射能集積は経時的に増加したが、KOマウスにおいて [18F]FEDACの特異的な集積は少なく、MCD食を与えても、放射能集積の増加を認めなかった。また、HE染色により肝臓病態の変化を評価した。WTマウスはMCD食給餌時間の経過につれ、肝臓が単純性脂肪肝から脂肪性肝炎に悪化した。それに対し、KOマウスは、MCD食2週間より過剰な脂肪集積及び単純性脂肪肝像を認めたが、4週間に与え続けても、肝臓に炎症が進まず、脂肪肝の病態が悪化しなかった。さらに、MCD食6週間に飼育すると肝細胞内の沈着脂肪がなくなる、肝臓の一部まで正常化し、肝機能の改善が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[18F]FEDAC-PETがTSPOに対する特異性的な診断ツールであることは確認された。また、脂肪肝の発症及び進展にTSPOが重要な役割を果たしていることを証明できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から得られた結果を基にして、申請者は、TSPO欠損が脂肪肝の病態改善をもたらした機序を解明する予定である。また、ヒト脂肪肝患者においても、肝臓TSPO発現の増加が認められたことから、今後詳細な解析を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画においては、脂肪肝の病態進行におけるTSPOの役割及び作用機序の解明するため、TSPOノックアウトマウスを購入する予定であったが、ノックアウトマウスはほかの研究者らから入手し、研究を展開できたから、平成25年度の助成金は繰越を生じた。 昨年度から得られた結果を基にして、今年度は、脂肪肝の病態発生及び進行においてTSPOが果たす役割と作用機序の詳細な解析を行う予定である。そのため、遺伝子解析試薬、消耗品および実験動物の大量使用によって、購入費用が高くなると予想されるため、昨年度の繰越分と合わせて研究を進めていく必要がある。
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Research Products
(3 results)