2012 Fiscal Year Research-status Report
雇用形態別に見た企業における組織的公正と従業員への健康影響に関するコホート研究
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24790599
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
井上 彰臣 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (70619767)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 組織的公正 / 職業性ストレス / 理論モデル / 非正規雇用 / 前向きコホート研究 / 質問票 / 生理指標 / 産業保健 |
Research Abstract |
本研究では,企業における組織的公正(手続き的公正および相互作用的公正)が従業員の心身の健康(心理的ストレス反応や,高血圧,脂質異常症,糖尿病など,虚血性心疾患と関連する身体的健康指標)に与える影響を雇用形態別(正規社員/非正規社員別)に明らかにすることを目的として,1年間の前向きコホート研究を実施している。研究期間1年目である今年度は,製造業の2つの工場に勤務する従業員3,461名(男性2,495名,女性966名)を対象にベースライン調査を実施した。このうち,男性の非正規社員は少数(34名)であったため,解析対象から除外した。更に,データに欠損値のあった者を除外し,男性正規社員2,229名,女性正規社員351名,女性非正規社員495名のデータをベースラインデータとした解析を行った。その結果,男性正規社員において,手続き的公正(が低いこと)と,心理的ストレス反応(K6得点が5点以上と定義),高LDLコレステロール血症(140mg/dL以上と定義)との間に有意な関連が認められた。また,相互作用的公正(が低いこと)と,心理的ストレス反応,高トリグリセリド血症(150mg/dL以上と定義)との間に有意な関連が認められた。一方,女性社員においても,手続き的公正,相互作用的公正(が低いこと)と心理的ストレス反応との間に有意な関連が認められたが,身体的健康指標との間には,いずれも有意な関連は認められなかった。更に,女性社員を雇用形態別に分類した場合,心理的ストレス反応に対する雇用形態と相互作用的公正との交互作用に有意傾向が認められ,非正規社員は,正規社員に比べ,相互作用的公正と心理的ストレス反応との関連がより強かった。本研究の結果は,あくまでも横断データによる知見であるため,来年度,因果関係を特定するために,フォローアップ調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた,ベースライン調査に関する一連の計画(調査対象事業場の選定,予備調査,調査の準備・実施,データ入力・解析)を滞りなく遂行し,横断データで,且つ,女性に限定した解析ではあるが,本研究の目的(職場における組織的公正が損なわれた状態が,従業員の精神的不調や,各種生理指標[コレステロール,中性脂肪,血糖値など]の悪化に影響を及ぼすことを明らかにするとともに,これらの影響を雇用形態別に検討すること)に対する結果を見出すことができたことから,おおむね順調に進展していると考えられる。一方で,調査対象事業場へのフィードバックに時間を要したことから,ベースラインデータを用いた成果発表が遅れており,これらの結果を早急に公表していくことが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.調査対象事業場への調査継続の確認(平成25年4~5月):調査対象事業場の責任者,産業保健スタッフに対し,調査の継続の可否について確認する。継続可能な場合,新入社員を調査対象に含めるか,調査票の内容についての修正が必要かなど,事業場の希望を確認する。 2.調査内容の加筆・修正(平成25年6月):調査票の内容について,調査対象事業場から加筆・修正の希望があった場合,その希望に応じ,調査票の加筆・修正を行い,最終版を作成する。 3.調査の準備(平成25年7月):対象者に配付する説明文・同意書・調査票を作成する(新規参加者は同意書が必要であること,継続参加者は,フォローアップ調査のため,同意書の提出は不要である旨も通知する)。 4.フォローアップ調査の実施(平成25年8~9月):健康診断の約2週間前に同意書・調査票を配付し,健康診断時までに記入を依頼する。健康診断時に同意書(新規参加者のみ)・調査票を回収し,血圧測定・血液検査を実施する。 5.データ入力と解析・成果報告(平成25年10月~平成26年3月):フォローアップ調査終了後,データ入力,クリーニング,および,統計解析を行う。調査対象事業場の要望に応じ,個人・職場へのフィードバックを行う。同時にベースラインデータとフォローアップデータを統合し,統合データを用いて,国内外の学会で成果発表するとともに,国際英文誌に論文を投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では,血液検査を実施するのに伴い,法定外項目にかかる費用(40歳未満の血液検査費用など)として500千円を計上していたが,調査対象事業場において,これらの項目が既に実施されおり,費用が生じなかったこと,また,消耗品を所属部署内の在庫で賄えたことや,フィードバック書式の印刷・封入作業を1人で行い,人件費がかからなかったことなどから,合計で約642千円を繰り越すこととなった。一方で,調査対象事業場への研究説明会や結果報告会の実施に伴い,複数の研究協力者を募り,旅費を支出したことから,当初の計画に比べ,旅費の支出が上回った。そのため,次年度は「旅費」を増額し,「その他」の費用を減額させる予定である。具体的な内訳(計2,242千円=642千円[繰越額]+1,600千円[次年度交付予定額])は以下の通りである。 1.消耗品:プリンタトナー,印刷用紙等を購入するのに162千円を申請する。 2.旅費:事前説明会および結果報告説明会の旅費(研究協力者を含む)として250千円を申請する。また,国内学会旅費として200千円,国際学会旅費として300千円(計750千円)を申請する。 3.人件費:フィードバック書式の印刷と封入作業の人件費として130千円を申請する。 4.その他:調査票印刷費として300千円,調査票回収用封筒・フィードバック書式返却用封筒の購入費・印刷費として100千円,調査票・フィードバック書式の運送費として30千円,データ入力費として550千円,国内外の学会参加費として150千円,英文校正費として30千円,論文掲載料として40千円(計1,200千円)を申請する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Organizational justice and psychological distress among Japanese workers with high or low job insecurity: findings from the Japanese Study of Health, Occupation, and Psychosocial Factors Related Equity (J-HOPE)
Author(s)
Inoue A, Kawakami N, Tsutsumi A, Shimazu A, Miyaki K, Takahashi M, Kurioka S, Eguchi H, Enta K, Kosugi Y, Sakata T
Organizer
12th International Congress of Behavioral Medicine
Place of Presentation
ブダペストヒルトン(ハンガリー)